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私は銃声と共にある

 鉛玉が私が隠れているコンクリートの壁にぶつかり、爆ぜる。
短い破裂音がして壁の一部がかけ落ちてリノリウムの床を転がる。
そして間を置いて同じく床に落ちて小さく高い音を立てる薬莢。
私をとりまく音の全てが、醜い殺戮衝動に溢れていた。

 壁から手を、手に握る小銃だけを突き出して
無作為に引き金を三度引く。
乾いた小さい火薬の破裂音と共に三度、軽く上に向かう反動を感じる。

「ぐぁっ!?」

 運良く弾の一つが"生徒"に命中したらしく、
情けない呻き声と共に力抜けた肉体が床に倒れ伏せる音が届く。
しかし私に向かう銃声は欠片もそれに構う様子を見せず、
複数名の放つ弾丸は私が背にしている壁と、
向かいの壁とを無残にも破壊させる。

 私は再度銃を壁から突き出して幾度か引き金を引いた後、
足跡を極力消してその場から走り別のルートから進行することにした。

 この"学校"の"生徒"は約二百五十名。
その内常時武装を許可されてる第三学年の人数は五十名、
火器の所持を許可されてる第二学年は八十名。
残りは武装をしてない、武装ができない第一学年百二十名程。
実施的な敵戦力は二学年と三学年の計百三十名。

 来た道を戻りながら先刻殺した"生徒"からサブマシンガンを奪い、
使っていた銃は肩にかけて弾を温存する。
ついでに他にも数名の"生徒"の死体を漁り弾丸を拾い、先を急ぐ。
二つの廊下と三つの教室を通過したところで一時停止、
この先からは掃討を行っていないため"生徒"が多数いる。

 直後銃声、射撃されるまえに影で存在に気づいた私は
咄嗟に柱に隠れ、的のいなくなった弾丸は廊下に設置されている
蛇口の一つを破壊して噴水のように水を撒きちらかす。
銃声に"生徒"が集まる前にとサブマシンガンを片手に
すぐに柱から飛び出して"生徒"を射殺、
そのまま走りやってきた数名の"生徒"も
まとめて亡骸に変えてさらに進む。
どうやらここら辺には一学年が多いのか、
銃火器を持たずモップやバットやらで無謀に襲ってくる
"生徒"がわらわらと沸いてくる。

 タタタとマシンガン特有のあの乾いた連続の銃声を
響かせてその群れを一分足らずで一掃し
全てを不気味な肉塊にジョブチェンジさせる。
周囲の白い壁も、薄汚れた廊下も、割れた窓も、
そして死体も全てが赤く紅く朱く染まり血液の匂いが充満する。
好きでも嫌いでもない、微妙な匂い。
その内、空気も紅く染まるであろうこの場から
私はなんの感慨もなく歩みを進めた。

 完全制圧させるには、もう少しかかりそうだ。


―――

「ブラボー、ブラボー」

 傷一つ、服のほつれも、返り血すら浴びず戻ってきた私を
"先生"は芝居がかった調子で両手を大きく叩いて迎えた。
しかしその人間味のある台詞とは裏腹に言葉自体は
非常に機械的な合成音に過ぎなかった。

 私はだらしない服装で装甲車によりかかる"先生"に近づいて
脇をしめた海軍式に近い敬礼を行ってから報告を行う。
私も"先生"も軍靴を履いてる訳ではないから例の音はしないけれど。


「咲苑学園、全"生徒"の掃討終了しました」

 直立する私の後方にある、私が先程まで居た"校舎"は
生命の一つも存在しないただの古びれた建造物として
あと一時間くらいは、建っていられるだろう。
一時間経てば、ただの瓦礫に変わるだろうけれど。

「はい、ご苦労様でーす。銃火器の回収及び"生徒"の死体の回収は
 こちらで行うのでもう"下校"してかまわないから」
「了解しました」

 覇気の感じられない口調の"先生"。
私はどうせしなくても気にしないであろう
敬礼と会釈を自身への義務として行い、
肩に下げた銃をガシャガシャと鳴らしながらその場から離れた。

 それと入れ替わるように、私が殺戮した"咲苑学園"の"生徒"と
"生徒"が所持していた武器を回収するための数人の部隊が
ぞろぞろと"校内"へと向かっていくのが見えた。
彼らは彼らで色々と武装しているのだが、
果たして死体の相手というのは私よりも重装備で
赴かなくてはならない程の大層な仕事なのだろうか?
私にはとてもそうは思えないのだけれど。
むしろ私の様な仕事をしている人間にこそ
その装備を支給するべきだと思うのだ。

 なんて、本当はいらないけど。
あんなの火力と引き換えに機動性が失われてしまう、
いくら防弾チョッキがあろうと、
動きが愚鈍で多量に被弾すれば意味がない。
私には、無用だ。

 校舎の周囲を部外者が入らないようにと
ぐるぐると多重に巻かれた『KEEP OUT』の黄色いテープをくぐり外にでて、
停めてあった自分のバイクに近寄る。
制服のスカートのポケットから鍵を取り出し
エンジンをかける。

「……」

 腕を上げて、少し匂いをかぐ。
服が少し血なまぐさい、
きっと髪も少し硝煙の匂いがするだろう。
帰ったら、まずはお風呂に入って、しっかり髪を洗おう。
そう思いながら、私はバイクに跨って、
そのまま誰も居ない道路を
ヘルメットもつけず重低音を響かせながら走り出した。

―――

 本棚には、本の代わりに種々様々な拳銃が並んでいる。
壁にはショットガンやライフルなどが掛けてあり、
机には整備中の分解された銃や各種弾丸が並ぶ。
生活的な物は一人暮らし用の冷蔵庫を筆頭にした家電が少々、
それに簡易パイプベッド、一つだけまともに本が収納されてる本棚、
14インチのテレビデオ、あとは紅茶好きの親友のために
置いた紅茶葉の缶が転がっている位。

 そのあまりにも無骨すぎる部屋を、
私はシャワーで湿った長い髪をタオルで拭きながら歩く。
フローリングの冷たく簡素な感触が足の裏を撫で、
髪から零れた水滴が点々と床に風呂場からの道を作る。

「今日は涼しい……」

 タオルを片手にカーテンすらない窓を開き、
入ってくる風を全身で感じる。
この部屋は狭いし、キッチンは高さが合わなくて背中が痛くなるし
コンロは使いにくいし、炊飯器と電子レンジを同時に使うとブレーカーが落ちるし、
ユニットバスだし、ゴキブリどころかムカデもでるけれど、
こうして夜に窓を開くといい風が入ってくるので、
少しは気に入っている。

 ひんやりと秋口の冷やかな風で身体の火照りを冷ました私は
壁にかかっているカレンダーを覗く。
今日の"遠足"は少し手間だった。
あれから二階と三階の全"生徒"を滅し
残った四階へ逃げた第三学年の除去に移ったのだが、
十数名の第三学年生徒が篭城してしまい
仕方なく複数枚の防火用耐熱耐圧コーティング壁を一枚一枚
物理的に突破しなくてはならなかった。
虎の子のグレネードも使ってしまったし、
これでは収支があわないと思う。

 ま、それでも明日と明後日は振り替え休日。
日曜日も併せての三連休なので、
久しぶりにのんびりとしようと気分を切り替える。

 ……あぁ、でも先に新しい弾も買わないといけない。
冷蔵庫の中身も補充しないといけないし、
他にも日用品を色々と買っておきたい。
連休でなければ買出しで一日が終わってしまう。
タオルを床に投げ、まだ湿る髪をそのままに
天井につけたS字フックにぶら下がる物干しから
白のタンクトップとショーツだけ身に着けてベッドに横になる。
今日の"遠足"で、直接的な外傷はないものの、
やはり広い"校舎内"を重い銃や弾丸を持ちながら走り回るのは
それなりに体力を消耗するし。
銃を幾度も撃てば肉体的ストレスも溜まる。
そうやってつまるところの疲労を大きく覚えていた私の身体は
窓を開けたまま電気も消さずにそのまま意識を失った。
多分、大きな寝息と共に。

―――

 翌日、時期も時期だというのに風呂上りに
髪もまだ濡れた状態で服を着ず、布団もかけず
さらには窓を開け放って寝た私は危うく風邪を引き掛けた。
夜中に寒さゆえの尿意に起きた際に気がついて閉めて、
冷えた身体を布団に潜り込むことで暖めたからよかったものの。
あのまま朝まで迎えていたら、いくら鍛えてると言っても
確実に熱をだしていただろう。

 そんなことを思いながら、
変に跳ねてる髪を掻きつつあくびをして起き上がる。
大きく伸びをして、全身の骨を鳴らして
顔を洗って歯を磨いて、髪を梳かして朝食を取る。
人間なら誰でもやる目覚めてからの一連の流れをこなして
床に適当に置かれた財布を広いあげて
ジーパンとTシャツ、それにジャケットと
時期的に少し早い位の出で立ちで部屋を出た。

 私の住んでいる借家は非常にくたびれていて、
廊下の床はぎしぎしと歩くたびに音を立て
蛍光灯はいつも頼りなく明滅を繰り返す。
鉄製の階段は錆びて歩くたびに高い音がするし、
手すりは同じく錆びて体重をかければ
即座に破損してしまうだろうと思われる。

 カンカンと音を立てて一階に降り、
誰もいないフロアを抜けてアパート玄関から外に出る。
同時に雲ひとつ無い空からは太陽が見え、
鋭い光と心地よい温もりに晒される。
瞳を手のひらで庇いながらそんな空を見上げる。

 とりあえずは生モノもあるし、
かさ張ってさらに重い食料品は最後として
やはり先に日用品とか買うべきだろうと進路を決め、
徒歩数分のディスカウントショップにてさっさと買い物を済ます。
この時点で既に大きい買い物袋がふたっつ。
さらに回って肉野菜等を買い、顔なじみのガンショップにも足を運んで、
その上全部を一人で持たなくてはならないと思うと
もう帰って残りを明日に持ち越したくなるほどげんなりするが
しかし仕方ない親友が用事で手伝いにきてくれないのだから
一人でやるしかないのだし。
明日になったらなったで外にでたくなくなるだろう。

「…………」

 ふと気付く。
ねっとりとした不快な視線。
湿度の高い都心の夏のようなべたつく気分の悪さ。
ポケットから懐中時計を取り出して時刻を確認するふりして
傷一つ無い表面のガラスで後方を確認し、
即座にジャケットで見えないように肩から下げてきた
グロックの安全装置を解除する。

 この場でいきなり銃を抜いてのドンパチ銃撃戦と
洒落込んでも構わない。けれどどうやらあっちもすぐに
どうこうという訳ではなさそうで、その場はグリップから手を放す。
万一でも勘違いだと対処に困るので、できればあちらから
アプローチを仕掛けてきての反撃という形で殲滅したい。

 先刻までと変わらない歩調で進みながら
相手の出方とそれに合わせた最善の殺し方を模索する。
防弾チョッキの類を着衣していないのはいつも通りとして――。

「……っ」

 大きなエンジン音。
一気に加速し空回りをするタイヤの音。
私は買い物袋を少し離れた位置に投げて、
先ほどの車がこっちに猛進してくるのを振り返りながら確認する。
どうやらさりげないつもりだったが先程の動作で、
気づいたことに気付かれたらしい。

 避けるのは間に合わない。
私はそう判断し、衝撃を食らった際にダメージのでかい
ぶつかる側の胸をたたんだ右腕で、
同じく内臓含むわき腹を左腕で庇い、
車が私にぶつかる寸前に地面を蹴って車の進行方向を同じ方向に跳ぶ。

「ぐっ……」

 ドンと右半身に強い衝撃。
胸をガードしていた右腕がボンネットにぶつかりミシッと
力を加えひしゃげさせた木の枝のような音を立てた、
折れては居ないがひびは入ってるだろう。

 普通の事故ならこの時点で車は停止するなりなんなりし、
轢かれた肉体は慣性で前方へ投げ出されるのだが。
どうやらアクセルをふかし続けているのか、
私の身体はボンネットに張り付いたままになっている。
そのまま車は数十メートルほど加速しながら進んでから、
もう十分だと判断したのか急ブレーキをかける。

 やっと私の身体はここで車とのペッティングを終え、
先述のとおり前に投げ出される。
アスファルトのざらついた路面に
この速度でそのまま落とされては山葵のように摩り下ろされてしまうので
私はその速度のおかげでやや長い滞空時間を生かして
体勢を変えて足から着地、そのままでは当然とまり切れないので
バク宙バク転をつなぎ、靴底をタイヤ痕のように残して勢いを殺す。
その途中で両脇の銃を取り出し車に向ける
弾は双方のマガジンに入ってる弾丸十七発プラス一発、
限りある弾をどうつかって効率よく掃討するために
私は再度アクセルを吹かす如何な素材で
できてるかわからない車本体でも、
防弾性であろうフロントガラスの向こうにいる
人数もわからない敵でもなく、
車のバンパーとアスファルトとの隙間の中間点
そのさらに少し下を狙って引き金を引き続ける。

 弾は全てが全てほぼ狙い通りに直進し、
車体下のアスファルトにぶつかり、火花を散らして兆弾する。
直下で跳ね回る弾はほとんどが車の裏側
車の動力部である機械部品に吸い込まれる。
当然その動力部には燃料であるガソリンタンクも含まれていて。

 轟音。爆音。
車は再度発進乃至は逃走することなく、
紅く橙な炎と黒い煙を巻き散らかして沈黙した。
周囲の住民は私と車の残骸を尻目に
そ知らぬ顔で足早にその場を去って行く。
私は空になったマガジンを抜き取り、
ジャケットの内ポケットの替えのマガジンと入れ替え、
知らぬ間にずいぶんと遠くなった買い物袋を取りに歩く。

「……しまった」

 歩き始めて一歩。
その感触にため息をつく。
今日買わなくてはいけないものが一つ増えてしまった。

―――

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今後の展開が気になります。あと2行目の

>リノリウムの床の転がる   は、
      ↓
 リノリウムの床を転がる    ですよね?

続きが読みたいです
細かい設定なんかが気になる

いつも思うのだけれど、続きが気になる終わり方して続き書かないのはひどいと思うのだよ
発売を楽しみにしている物の予告ばかり見せられている気分だよ
つまりだ、続きまだ?

さりげなく加筆してあった訳だが

この後の展開、あるんだろうか


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