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ハルヒ「キョン!あんた、あの澪って子とどういう関係なのよ!」


「なにって……、お前に関係ないだろ?」

 昼休み、昼食を終えて教室に入るなり涼宮が俺に詰め寄ってきた、
毎度のことながらこの威圧感は今年十六歳になる高校一年生がだしていい物ではない。
まぁ通用するのはあくまでも学生程度で、一般の社会人には効果はあまりなさそうだがな。

「さっきもべつのクラスでその娘とお弁当食べてたでしょう!?」
「だからなんだ……」
「どんな関係なのか言ってみなさいっての! 弱みでも握って脅してる訳?」

 なんでそんなことしなくちゃならないんだ俺は。

「あんたがあんな可愛い娘と昼食してたらそうおもうわよみんな!」

 なんて言い草だ。



 どうしたものか、付き合ってると素直に白状するか?
いや、また変なへりくつを捏ねくりまわして澪の方にまで悪手を伸ばしかねないし
下手な監視をされても敵わない。
しかし人の話も感情もなにも知らぬ存ぜぬで物事を進める癖に、
こういう時だけやたら心の機敏に敏感な涼宮を俺はだまくらかせるのだろうか……。

「あー、あれだべつに――」
「キョンは秋山と付き合ってんだよなー」

 谷口が俺の逡巡とそこから判断し行おうとしていた弁解を一気瓦解させた。
とりあえずお前はいますぐこの前貸した三千円を返せ。

「……あの娘と付き合ってるの?」
「あー、まぁ、そうだ」
「ふぅん」

 目が細くなり、涼宮の俺に対する視線になにやら剣呑な物が混じる。
谷口、利子を含めて五千で返せ。

「あっそ、三年生になるまえに父親にならないようにしなさい」
「なっ!?」

 延々と睨まれた揚句、とんでもない発言をしやがった。
まだキスもしてない!

「あらそ、知らないわよそんなの」

 唾棄するように最後にそういって、涼宮は自席に戻った。
なんで俺はあいつの前の席なんだろうか……。

―――

「ごめん、待たせちゃったな」
「いや、俺もさっき団活が終わった所でな、遅れたと思ったんだが……
 軽音楽部は練習熱心だな」
「またわかってる癖にそんなことを言う……。今日もほとんど楽器にすら触ってないよ」
「ま、確かに演奏はまったく聞こえなかった」
「今度音楽室に来てみる? ギャラリーがいればみんなもやる気だすだろうし」
「それもいいな」

 談笑しながらの帰宅道。
なにに気を使うでもない、自然な会話は非常に心地よい。

 夏も近くに迎える物の、まだ春。
陽気は暖かいけれど、五時を過ぎると途端に暗くなる季節。
橙から紅、そしてゆっくりと紫色から紺に変わっていく空を眺める。
そんな俺に釣られて澪も同じく空をみる、飛行機雲でもあれば、
風情がありそうな彩りの空に、しばし目を奪われる。
端には浮かびはじめたばかりの月や、宵の明星こと火星もみえる。
……火星だったよな?

「綺麗だね」
「あぁ、……だけどこの空がどんなに美しくても、それは世界で三番目だよ」
「どうして三番目なの?」
「君の瞳が、二つあるから」


「行こうか」
「そうだな、あんまり遅くなると澪は女の子だからな」
「ははっ、子供じゃないんだからこれくらいの時間なら大丈夫だよ」

 しばらく空を眺めたあと、そんな会話をしてまた歩きだす。
二人肩を並べて、ゆっくりとした歩調を維持しながら、
少しだけ遠回りしたいつもの分かれ道まで談笑を続ける。

「なぁ、澪」

 別れ際、俺に向かって手を振る彼女にふと声をかける。
なにか言いたいことがあった訳じゃ無いけれど、つい。

「なに?」
「……今度、デートでもしようぜ」
「え? う、うん。えと、いっ、いつかな?」
「じゃあ……、今度の週末は?」
「わかった! あ、あけとく! 絶対だぞ!」
「あぁ、わかってる」
「デートか……」
「……澪」
「なにっ!?」
「好きだ」
「はうっ……、わ、私も好きだよ」

―――

 こつこつと、アスファルトと幾度もぶつかる靴の音。
二人分から一人に減ったそれは、街灯の燈り始めた暗い住宅街に静かに反響する。

 カラカラと、自転車のシャフトが空回りする音。
二人から一人になっても、なんとなく自転車に乗らず押しつづける俺。

「遅かったねー」

 家の門の前。
一つの、比較的小さな影がこちらを向いて言葉を発する。
妹より大きい人影に、俺は変わらぬ速度で接近する。

「待ちくたびれちゃったよ」
「それはすまなかったな」

 門の前に俺がたどり着くと、そいつはスッと移動してその場を俺に譲る。
俺はいつものように自転車をしまい込んでから、そいつに向き直れば、
そいつは少し高い場に移動した俺を見上げて、人畜無害な笑顔を浮かべる。
鞄と、もう一つ大きな荷物を背中に背負った少女、
俺はそいつを知っている。

「とりあえず、あがってけ。……平沢」

「うん、そうする」

 人懐っこい、笑顔。
幼さが残る顔立ちに、若干舌足らずな言動。
開け放した門から入ってくる平沢の、重そうな荷物をなにくれとなく奪う。
ギター、軽音楽部所属。秋山澪。平沢唯。

「あれ?」
「先に行くぞ」
「あ、うん。……ありがとうキョン君、相変わらずやさしいね」
「はいはい」

 制服のままで、平沢は家にあがる。
当然だ、俺が下校時の待ち合わせで先着だったということは
澪は部活が終わると同時に俺の元に来たということになる。
平沢も、同じ部活なら終わったのも同じ筈で……。
家に帰って着替える時間なんて無いだろうそりゃ。

「あー、唯お姉ちゃん。また来たんだー!」
「あははー、また来ちゃったー」

 妹が玄関の開く音に反応して走って、俺の腹に全霊のタックルを噛ましてから
平沢と何事もなかったかのように朗らかな会話を始める。

「平沢、あんまり構わなくていいぞ?」
「えー? 妹ちゃんかわいいよー」
「……まぁ、お前がいいならいいが」

 ギターを担いで、はしゃぐ二人を置いて階段を上る。
きゃいきゃいと声をあげる二人はまるで姉妹のようで、
しかし決して平沢が姉に見えることはなかった。
双子、みたいな。
幼い妹と、同レベルで話せる平沢。正直少々うるさい。

「ごめんね、キョン君」

 結局、平沢が部屋にあがってきたのは五分程たってからだった。

「部活でもあんな感じなのか?」
「え?」
「澪が愚痴ってた。練習してくれないって」

「へぇ……、澪ちゃんが」
「あぁ、それで澪に今度音楽室にギャラリーとして来てくれって言われた」
「仲良くやってる、んだね」
「そりゃ、恋人だからな」

 部屋の真ん中、クッションに座る平沢と、ベッドに腰掛ける俺。
待ってる間に俺は着替えてしまった為、現在はラフな部屋着。
平沢は、汗をかいた冷たい麦茶入りのグラスを手にとり、軽く煽る。

 タン、とグラスが再度テーブルに置かれた音が耳朶を叩くと同時に、
俺は人一人のまるままの重量を受けてベッドに押し倒された。
そして、俺に被さる形になった平沢は、なんの躊躇いも戸惑いも逡巡もなく、
その淡い桃色の唇を俺に重ねてきた。
人はそれを緊急延命措置を除いてキスと呼ぶ。
それは、軽く一分は続いた。

「――っ、なにすんだ」
「キス、だよ……?」
「んなの、わかってる」

 ベッドのスプリングが、二人分の体重に音を立てて軋む。
俺は、平沢をどかして起き上がろうとして、
平沢がどこうとしないのを見て取って諦めた。

「嫌だなー」

 平沢は、俺がなすままになってる現状を受け入れたと知るや
俺の肩に、俺の動きを抑える為、そして支えとしてあった自身の両腕を解いて、
俺の胸に額を擦るように張り付いてきた。

「……なにがだ?」
「澪ちゃんがキョン君の一番だってこと」
「わかってた事だろうに」
「そうなんだけどね、なんか、やっぱり嫉妬しちゃう」

 先程まで丁度よかった筈の室温が、いまは非常に暑く感じる。
脇腹に触れる、平沢の手の体温が、やたら熱い。
脇腹だけじゃない、平沢が触れている全ての箇所が熱い。

「お前なぁ……、澪ともまだキスしてないんだぞ俺」
「知ってる、よ」
「ま、そうだろうな」

 平沢は、顔をあげずに俺にしがみついて離れない。

「いい加減、離れろよ」
「やだ」
「妹に見られたらどうするんだよ平沢」
「大丈夫だよ」
「俺が大丈夫じゃない」
「……キョン君が大丈夫じゃなくなっても、大丈夫だよ?」

 着信。
沈黙と静寂が支配していた、狭い空間内を、
唯一指定着信にしている曲が大音量で流れ、ぶち壊す。
澪からの、電話だ。

「っ!?」
「ひゃっ!」

 平沢に回しかけていた腕が、弾かれたような動きを見せて
ベッドが嫌な音を立てる早さで起き上がり、携帯を手にとる。
心臓にニトロが流れ込んだようだった。
鼓膜が心音をやけに大きく認識する。気持ちが悪い。

「も、もしもし」

 深呼吸を手早く行って、電話にでる。
平沢が、ベッドの端で俯いてるのが視界に映る。

『もしもし、キョン?』
「携帯だからな、そうだろう。なんのようだ?」
『ほら、その、デ、デ、デートの、事で……』
「あぁ、そのことか……」

―――

「――じゃ、また明日」
『うん、また』

 ほんの数分の間、澪の声を聞いて、会話して。
それだけで、さっきまでの動揺も、熱に浮かされた感覚も、消え去った。
電子音が聞こえるだけになった携帯を畳んで、
俺は冷静になった頭で平沢に向き直る。

「平沢――」
「ねぇ、キョン君」

 声を掛けようとしたら、
重ねるように、打ち消すように平沢は話し出す。

「電話、なかったら。私のこと抱いてくれた?」
「……多分、な」
「えへへ、そっか……」

 小さく、微笑む平沢に、俺はまた流されそうになる。
俺と平沢の関係に置ける、不文律。
いままで、互いに侵さなかったその行為を、自分の意思で平沢にしそうになる。

「ごめんな、唯」

 代わりに、抱きしめる。
細く小さく柔らかなその体躯を抱きしめる。
強く、壊れない程度に、強く。
平沢は、か細い声で、微かに泣いた。

―――

「はぁ? なんだって?」
「だから、これからしばらく、不思議探索は土日の両方やることにしたから」

 したから、じゃねぇよ。
こっちの予定を考えろよ、無休なんて御免被る。

「なによ、どうせ暇でしょ?」

 暇じゃないから文句言ってんだっての。
誰かこいつに一般常識をインプットして、このバグだらけの人格を丸ごとアウトプットしてくれ。
バックアップはいらない。

「なによ予定でもあんの?」
「だからさっきから俺はそういってんだ」
「キャンセルしなさい」

 恣意的すぎるぞこいつ。
ちょっと誰か黙らせろ。
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