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キョン「待ってくれ長門!」


10/27 追記分

―――

 なにが変わったって訳じゃない。
お互いに秘密というか、なんというか、
他言のしようがないなにかを共有したところで
急速に関係が発展するほど現実は甘くはなく。

 また俺自身もなんだかんだ言って
そんなにすぐに物事を割り切れる程に
大人でも潔い訳でも冷めてる訳でもなかった。

 だから俺の毎日なんてのは変わりなく、
平日は学校と団活、休日は惰眠か連れ出されるか、
その程度の日々で。
結局、朝倉とも不自然なまでに自然に
ただのクラスメートとして振舞っていた。

 
 何事も無かったかのように。
 何事も無い日々が、続いていた。


「ちょっといいかしらキョンくん」

 教室破綻の事件から、一週間。
放課後、俺が帰宅のために立ち上がったところを、
そんな風に朝倉が声をかけてくるまでは。

 クラスメートは三々五々、
自宅なり部室なりに向かうったり
席の離れた友人の元へ向かって談笑したりと
放課後のざわめきの雰囲気を醸し出している。

「……構わんが」
「そ、よかった」

 俺は鞄を手に取った状態で静止していた身体を
返事を行いながら動かす。
涼宮は、すでに教室からいないし。
残っているクラスメートも別段俺達に興味を示すものは居なかった。


「すまん谷口、今日の約束少し遅れるかも知れん」

 俺は国木田と二人でこの後の予定について話してる谷口に
一言だけ声をかけて朝倉と二人教室をあとにした。

「約束があったの?」

 帰宅する生徒があちこちに見え、
少し窮屈な感のある廊下を俺と朝倉は肩を並べて歩く。
邪魔くさいと思う反面、少し安堵する俺も居る。
誰も居ない廊下と朝倉と二人になることが怖いと、思っている。
それは、俺がいまだにあの日のことを鮮明に記憶してる証左で。

「まぁな、涼宮と馬鹿ばっかりやっててもあれだしな
 男同士の友情も大事にせにゃならん」

 しかし俺はそれをおくびにもださず言葉を紡ぐ、
前の生徒にぶつからない様にゆっくりとした歩調で
朝倉に合わせるように歩く。


「ふぅん、よくわからないわ」
「……お前、よく女子の中心に居る癖に
 遊ぶ約束とかしないのか?」

 興味なさげに呟く朝倉に、
咄嗟に疑問を口にする。
疑問と言うか、疑惑。もしくは疑念、ないしは疑心。
まぁ聞いといてなんだが、ある程度は予想をしているが。

「遊びはするわよ?
 でもそれはいまの立場を維持するための手段でしかないし
 友情なんて興味ないわ」
「興味ない……ね」
「そ、あなたが数学の授業を寝て過ごすのと同じことよ。
 わからないのよ、友情なんて。わからないから、つまらないし、興味をもてない。
 それはどんなものでも一緒でしょう?」
「……なるほど、ね」

 廊下で歩きながらする会話ではない。
ないが、だが一理あるのだろう。
わからないと、楽しめない。
楽しめなければ、面白いはずが無い。
面白くないものに、どうして興味関心が持てようか。

 例えは勉強でなくてもいい。
芸術がわからない人が美術館行く。
骨董の価値がわからない人が、骨董店に行く。
野球のルールがわからない人が、球場に行く。
どれも、楽しくも面白くも無いだろうと俺は思う。

「わからない、って言ったな?」

 だからこそ、俺は言う。
ならば、学べ、知れ、と。

 俺が勉学に対してそうであるように、
興味関心の無いものを義務として学ぼうとするのは
苦痛でしかないのは百も承知だ。

「お前はわからないと言ったな朝倉。
 この前、お前は最初から全てを知っていたと言ったけれど
 それは物や事象や歴史などの知識だけだ。
 けれどお前は人として最も重要な曖昧としたものは知らないんだ
 それが事実なんだよ朝倉」

 そういうとき、どうしたか。
俺がガキの頃、勉強を投げ出してばかりの俺はどうされたか。

「だから、なに?」

 母が、ゆっくりと噛み砕いて俺に教えてくれた。
わかりやすいように、一緒に机について、
ちょっとした会話を交えながら、少しずつ。

「俺が教えてやるって言ってるんだ」

 キョトンと、朝倉は足を止めて目を丸くした。
そんな表情もできる癖に、それでもわからないなんて言うのか。

「え? ちょっと意味がわからないわ」
「そのまんまだ。それともわからないものをわからないままにしていいのか?
「なんでそんなくだらないことを私が一々……」
「詳しく知って、理解して、把握して、認識して、
 それでつまらないとかくだらないとか言うなら仕方ない。
 趣向の違いだからな。けど、知らないままに、食わず嫌いするのはよくないってことだ」

 廊下の真ん中で足を止め、
真っ向からにらみ合う俺と朝倉。
上記のような図は流石に傍から見れば普通ではなく、
一部の同輩達は俺達を見て何事か囁きあっている。

「……はぁ、行きましょうか」
「そうだな」

 しばし対峙した後、
どちらからともなく俺達はまた歩き始めた。

 普段から優等生で社交的な委員長である朝倉が
口頭とは言え喧嘩しているという図は朝倉にとって有益ではない。

 同じく斯様に評価の高い朝倉と睨みあってる俺も、
今後の風当たりとか味方の数を鑑みるにこの状況は良くない。

 そういうことだ。

「で、この後どこにいくつもりなんだ?」

 知っての通り俺はこの後友人と遊びに行く予定があるのだが。
と、暗に語りつつ問うてみる。

 思えばもうすぐ下駄箱。
校内でないとするなら、結構時間がかかるのかも知れない。
ならば谷口には悪いがドタキャンの連絡を入れなくてはいけないからな。

「べつにどこに行こうとか思ってた訳じゃないわ」

 しかし朝倉はなんということもなく呟く。
どこかに行くわけじゃない?
つまりなにか話すべき事柄があった訳じゃないのか?

「そういうことよ。少し、普通に話そうかと思っただけ。
 本当はもっと早く話しかけようかと思ってたんだけど、
 タイミングというか、まぁそんな感じよ」
「……そうか」

 なんというか、拍子抜け感がある。
まぁ都合はいいのだが、
それなりに肩肘張って構えていた手前どうするべきか……。

「そうだ、朝倉」
「なに?」
「なら、今日は一緒に帰るか」
「……別に、構わないわよ」

 CGで構成された緻密な映像がめまぐるしく流れるような光景。
そんな中、顔にべったりとついた長門の血を拭う事もせず、
咄嗟にに俺は長門を呼びとめた。

「なに?」

 致死量をとうに超えた血液を体外に垂れ流しにしても尚、
渾然と仁王立ちする圧倒的な少女は、決して小さくも細くも無い
一般的な、長門自身よりも背の高い少女を掲げたままで、
俺に黒水晶の球状塊のような瞳を向ける。

「朝倉を、消さないでやってくれ」
「なぜ?」

 か細く白いその腕は、相変わらずクラスメートの委員長の
やはり白く細い首を掴み続けている、委員長こと朝倉の足は、
地に付いていない。

「俺は、お前が言っていたことをいま信じた」

 先日の、無機質で無個性で殺風景な長門の部屋。
そこで聞かされた酔っ払いの与太話と同系列に並ばん勢いの会話。

「だが、お前が宇宙人だかなんだかだとわかっても
 お前を人間じゃないとは思わない。長門、お前は俺達人間となにも変わらない。
 同じだ、そう思っている。そして朝倉はお前と同じ存在だとわかった。
 俺と長門が同じで、長門と朝倉が同じなら、朝倉も俺達となんら変わりない、
 俺は、そんな朝倉を宇宙人と割り切って敵だからと目の前で殺されるのを見てみぬ振りは出来ない
 長門頼む、朝倉を殺さないでやってくれ」

 懇願、と言うのだろうこういうのは。
いまだに身体は震えて足は言うことを聞かず、
立ち上がることもままならない。
そんな不様な姿で俺を助けてくれた長門に、
俺を殺そうとした朝倉を助けてくれと懇願していた。

「……あなたって馬鹿ね」

 かすれた声で朝倉が呟く。
諦めた表情でただ長門に消されるのを待ち、目を瞑っていた朝倉が、
薄目を開けて小馬鹿にした様に俺を見下ろす。

「それがあなた達有機生命体の思考回路なの?
 なんで殺意を向けた相手に慈悲をかけられるの? その理由はなに?
 目の前で人が消えるのは目覚めが悪い? 自分の偽善心を満たしたい?
 私には欠片も理解できないわ、馬鹿じゃないの?」

 首を絞められ、ぶら下がる非常に苦しい体勢で、
朗々と俺に自身の疑問を遺言の如くにまくし立てる朝倉に、俺は微苦笑を浮かべて
たった一言。

「殺されかけても、お前が宇宙製のインターフェースだとしても
 俺が抱いてた好意が全部消えたりしなかった。それだけの事だと思うね」

 長門は、こちらに向けていた漆黒と表現するに相応しい瞳を
二ミリ程細めてから、朝倉に向き直り。

「そう」

 と言って首にかけていた五本の指を外した。
枷から唐突に開放された朝倉の身体は砕けた床の上に音を立てて、
その場に蹲る様に崩れ落ちた。
彼女の首には、細い指の後が紅く痛々しく生々しく仰々しく残っている。

「――――――」

 長門がなにか、呟いた気がする。
それだけで吹き飛んだ机や椅子が、砕けた床や壁が、
青空教室になっていたこの一つの空間が元の形を取り戻していく。
それと同時に倒れ付す朝倉の身体を青白い光が照らす。

「おっ、おい長門!?」
「大丈夫、ただ朝倉涼子は情報統合思念体の意思に反する行動を取った。
 消滅をしないにしても再度の暴走を抑制し、あなたに危害を加えないように
 しなくてはいけない。必要不可欠、最大の譲歩として彼女の存在の継続の変わりに
 彼女の情報改竄能力を制限、地球上の普遍的な人間と同レベルにまで後退させる
 ……それももう終わった」

 発光はすぐに収まり、変わった様子を外からはなにも見受けられない朝倉が
直ったばかりの教室の床に倒れて眠っていた。

「おい朝倉……」

 ようやく起き上がりその身体に歩み寄ろうとしたところを長門に止められる。
黒い瞳の表面に映る自分が非常に間抜けで苦笑が浮かぶ。
長門はそんな俺にはまったく取り合わずにただ告げる。

「まだ彼女には近づいてはダメ、明日まで待って」

 そう言って朝倉をひょいと担ぐ長門。
俺は呆然とその場に硬直してそれを眺める、変なバトル展開よりも
よっぽど長門の力強さと言うかなんというかを感じさせる行動だった。

 不意に教室のドアが開き、そして誰かが入ってくる。

「WAWAWA忘れも……のわぁ!?」

 谷口が妙な体勢で驚きを表現してそこにたっていた。
…まぁ実際中々に興味をそそる光景ではある、不思議不可思議な状況だ。
俺より頭二つ分小さい谷口曰くAマイナーの少女が、
同じく谷口曰くAAランクプラスの朝倉を背負っているという
海外に存在する鯖の缶詰並みのシュールな状況だ。

「……んんっ、ご、ごゆっくりぃ!?」

 タイを直して間を稼ぎ、状況を吟味してから疑問文で去っていった谷口。
面倒な奴に面倒な状態を見られたものだ。

「ユニーク」
「いまのお前が言うな長門」


―――

 次の日、登りだけのジェットーコースター、地獄坂、普通に通学路を
辟易しながら歩いていた俺は学校の門が見えるなり少々動揺した。

「よぉ」
「……おはよう」

 気だるそうな朝倉が正門の脇に寄りかかって立っていた。
明らかに不機嫌オーラを太陽が発するコロナのように
周囲に揺らめかせて俺の挨拶に渋々と答える。
ここで謝ってしまいそうになるのは仕方のないことだろう。
それで、朝倉さんちの涼子さんは俺に何用なのかね?
あまり愉快な流れではなさそうだけれど。

「一応礼を言っておこうと思ってね」

 一応礼を言われた。
ってその伏目がちに溜息混じりの礼を言われても
こちらは毛頭感謝の気持ちなど受け取れないのだが。

「このインターフェースと私の自意識の代わりに
 色々と抑制されてね。私もただの人間同様になっちゃったし
 こんなつまらない日常を打破することにも失敗した上
 爪も牙も折られて、鎖に繋がれて。本当生き地獄だわ」

 疲れた様に呟き首を振る朝倉。
しかし登校してる連中のすぐ脇でどんな会話をしてるんだ俺は。

「生きてればそのうちいいことがあるだなんてそんなの嘘よね?
 命だけは助けてやるなんて、そんなの最悪の行為よ」
「それはすまなかったな」
「謝罪の気持ちが感じられないわ」

 それはお互い様だ。
大体最初の礼を除いて全てが不平不満じゃねぇか、
んなこと俺に言われても困る。
そもそもお前がやりたいことをやった、
状況を変えたいから俺を殺そうとした。
俺だってお前の感情や意向なんて無視してやりたいこと言いたいことをしただけだ。
そんな俺に非があるみたいな言い方をされても筋違いだ。

「それにな朝倉」
「……なによ?」

 ここで初めて朝倉が顔を上げて俺を正面から見据える、
それだけで言葉が一瞬詰まって「なんでもない」といいそうになる。
しかしそれじゃダメだ、俺は真面目ではないがそれでも
言わなくちゃいけないことがある、権利には義務が付きまとう。
行動には責任が同様に付属する。

「生まれて三年間でなにがわかるんだよ?」

 権利を無いのに、義務を放棄してまで行動をした朝倉は
俺が止めなければあのまま責任として存在の抹消をされただろう。
ならばそれの代わりに生じた責任がある。
殺そうとした対象の、俺の話を聞いて、
今後は普通の人間として生きること。

「人間ならまだ幼稚園に入園したてだ、正直記憶になんかありゃしない。
 親がいなければ生きていけないし、見るもの聞くもの触るもの嗅ぐもの、
 全てが等しく新しくわからないものだ、十五年と少し生きてもそれは
 大して変わってなんかいない。わからないものだらけだ」
「私は最初から全て知っていたし、思考回路も認識能力も
 最初から人間よりも高い次元で持っていたわ」

 そして巻き込まれた者としての発言する権利を行使し
朝倉の命を救ってしまった俺としてはその行動の責任として、
普通の女の子として今後朝倉が生きていけるようにフォローする。

「それは知識であって記憶じゃないぞ朝倉。
 広辞苑を丸暗記したって、それがどういうものなのか実際には知らない。
 百聞は一見に如かずだ」
「人間には私達の感覚がわからないわ」

 それが俺なりの責任だと思う。わからんが。
単に近くに居たいだけなのかもしれないし、そうじゃないのかもしれない。

「お前も人間だ、昨日もそういった筈だ朝倉。
 お前は少しお節介で思い込みの強い可愛らしい俺の好きな女の子だ」
「……あなたって馬鹿ね」

 朝倉は、少しだけ笑って。
俺の肩を軽く叩いた。
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Comment

殺生だから続きを・・・

続き、は考えてないこともないんだけど
カテゴリ→更新未定から察せるように、
その繋ぎが浮かばないのよ
結構前に書き溜めた奴だから構想も曖昧になってるしね……


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