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長門「…エヴァには私が乗るわ」 最新分

前回までのあらすじ
まとめをみよう
―――


 もうこうしてエヴァにのって出撃するのも何度目になるのか。
小さな駆動音、全身にかかるエヴァの四肢の感覚、
LCLの匂い、液体に身を浸す感触、
溶けきらず気泡となる吐息、瞼を閉じても見える外界。

「エヴァ各機リフトオフ、目標はA-6ブロックを微速移動中」
「了解、移動を開始する」

 ハンドガンとパレットライフルを装備し、
アンビリカルケーブルを引きずりながら街を走る紫の機体。
目標を中心とした四角形となるようにエヴァを動かす。
俺は目標進行方向の左前方、
以下、零号機弐号機3号機の順で、
左後方、右前方、右後方。

 時折、思い出したかのように回転する純白の立方体。
縦に横に勢いよく。文字通り縦横無尽に回り回る。

『あの動きキモいわね…』
『なにか意味があるんでしょうか』
「さぁな、長門はどう思う?」
『…不明、しかしここは黙って出方を見るべき』
『私は攻撃してみた方がいいと思うけどね』

 ハンドガンは肩に閉まってあり、
今構えているのはパレットライフル。
射程内ではあるものの、しかし攻撃意思はまだ感じられない。

 ビルに姿を隠し、目標の姿を確認してまた進む。
非難がとっくに済み人の居なくなった街並み、
無音で移動する敵。
どうにも静か過ぎて気分が悪い。

『ひゃっ!?』

 あやのの焦ったような声、
それと後方からエヴァの聴覚で聞こえる低い接触音。
俺は突然目標が攻撃行動を始めたのかと思い、
武器を構え視界に入ってる直方体に銃口を向けた。

「大丈夫かあやの!?」
『う、うん。ケーブルの長さが足りなくなって転んだだけだから…』
『ちゃんとゲージ見ときなさいよ、驚くじゃない…』

 緊張の後の安堵。
それは弛緩。紛れも無い隙。
それが、長門を除いた三人に、一瞬蔓延した。

『パターン変異! 神人と確定!』

 一瞬だった。
緊張から弛緩して、声を受けて降ろしかけた銃口を再度立方体に向けるまで、
多分あって二秒程。
その間に、敵の姿は、俺の視界のどこからも、雲散霧消していた。

 次にそいつを発見したのは後方、3号機の方を向いたときだった。
ようやく立ち上がり、ケーブルを外そうとしている、3号機、
つまりは、ケーブルによって逆に、拘束され、動けないあやのの、直上。

「あやのっっ!」

 もはや陣形もなにもない、
全力で身動きできない3号機に向かい走る。
3号機から最も遠い場所に居た零号機が援護に射撃を行う。
パパパと軽い銃声と共に直方形の敵から離れた場所で
幾度となくA.T.フィールドにぶつかり弾ける弾丸。

『くっ、これって…』

 あやのの声。
見れば足元にある真四角の影に足首まで3号機が埋まっている。
これでケーブルの如何に問わず身動きを封じられた。

 マズいと思った。
ヤバイとも、キツイとも、思った。
あやのはこれでエヴァで実戦にでるのは二度目、
真っ先に標的にされて混乱しやしないかと、錯乱しやしないかと、思った。

『こいつっ!』

 だが、あやのは弱音を言うよりも先に、
泣き言を言うよりも早く、助けを求めるよりも急いで、
自身の所持していたソレッドニードルガンを構え引き金を引いた。
本来火薬でなく電気で弾を無音で打ち出す、
遠距離から敵に悟られないように攻撃するための銃で、
細く鋭い銀の針を幾重も打ち出す3号機。
その全てはフィールドで防がれ甲高い音と共に影に埋没する。

『でぇりゃぁぁぁぁ!』

 ついで柊の声。
ソニックグレイブを上段に構え振り下ろす。
遠方からの狙撃、下方からの射撃、上方からの斬撃、
しかし直方体は全てを防ぐ。

 高い、金属音。
弾ける火花。
神人がくるりと一回転、弐号機に向かって行うと、
全ての攻撃を防いでいたそのA.T.フィールドがぐいと押し出され
ソニックグレイブだけを支点にしていた弐号機を吹き飛ばす。

『きゃぁっ!?』

 地に足がついてない状態で力を加えられた弐号機は
大きく吹っ飛んで、狙い通りなのかどうか一直線に
零号機に向かい、受け止められる。

 残ったのは、3号機と、
そしてようやくおいついた俺、初号機。

 3号機の足元、真四角の陰に付き刺さる
跳ね返った銀の針。
そして沈み込む3号機の足首から下。

「あやの、大丈夫か?」
『うん、問題ない。ただフィールドが強すぎるみたい、
 近接系の武器で直接フィールドを引き剥がさないと厳しいわ』
「……そうか」

 口調がいつもと違う。
雰囲気が、普段と違う。
それでも、感覚がわかる。
エヴァに乗り、自分が変わるイメージが明瞭に。

 ここまで接近すると遠距離用の武器など無用の長物、
離れようにもどうやらこの影はかなり強力な束縛力があるらしい。

「動くのは無理か?」
『無理というか、足首から先、影に埋まってる部分の感覚がない』

 ふと、パレットライフルの弾が切れ、
マガジンを換装しようとしたとき。
神人の不明瞭で不規則で不気味な回転が途切れた。
完全な静止。
その体勢は、いつぞやのビーム砲台を思い出す。
図形、記号、立方体と八面体。

『強力なA.T.フィールドを感知! 危険です!』

 オペレーターの声。
危険なのはわかってる。
なにやら良くない雰囲気だ。
しかし、3号機はこのままじゃ動けない。

 立方体が、縦に伸びていく。
周囲の光を捻じ曲げて、淡く七色に光ながら、
その黒く四角い身体をゆっくりと空に向かって伸ばしていく。
じわじわと、じりじりと、ぎりぎりと、
それを同時に、底の部分、底面の部分に対角線を結ぶように
白く、光が漏れる筋が浮かび上がる、
側面も、角にあたる部分が一番上まで白い筋が入っていく。

『アレは……キョン君、早く3号機を引き上げて逃げて!!』

 喜緑さんが叫ぶ、
呆気に取られ、ただ形状を変えていく敵を眺めていた俺は
そこで我に返る。
いまや立方体の敵は直方体となり、
そして筋に沿ってゆっくりと口のように四つの部品に分解しつつある。

 中心に空間が空いたプラスのような形態に変わった神人。
俺は3号機の腕を掴んで引き上げようとして気づく。
影が、変わってない。
上空の神人が形が変わったのだから、その下の影も、
当然形が変わってなければおかしい。
そしてそうなれば、影にいたあやのは丁度中心の空間の部分にあたり、
影から開放され、俺が今度は影に捕われるはずなのだが、
あやのは以前影に足を絡め取られたままだった。

「あやの! 腕を!」

 こちらに伸ばされる腕を掴み、
一本釣りでもするようにぐいと引っ張りあげる。
3号機の重量よりもよほど大きな加重に後ろに倒れそうになるが、
どうにか3号機をそのままの勢いで神人から遠く離れた地点にまで
乱暴ではあるが移動させることに成功した。


 







 と、思った。




 影から抜け出させることに成功したし、
初号機の頭上を越え、俺が手を離せば、
多少はあやのにもバックがあるだろうが
確実に距離を取れると、思った。

「は?」

 バクン、と。
いつの間にかずいぶんと降下していた神人が、
俺とあやのの頭上にきちんと座標を直して、
開いた身体を元に戻すように、
開いた朝顔の花弁がするすると蕾に戻るように、
勢いよく、素早く、目にも映らぬ速度で、


 掴んでいた初号機の腕ごと、




 3号機が、まるまる、喰われた。



―――


 ひかりの中で 見えないものが
 やみの中に うかんで見える
 まっくら森の やみの中では
 きのうはあした まっくら クライ クライ

 さからはそらに ことりは水に
 タマゴがはねて かがみがうたう
 まっくら森は ふしぎなところ
 あさからずっと まっくら クライ クライ

 みみをすませば なにもきこえず
 とけいを見れば さかさままわり
 まっくら森は こころのめいろ
 はやいはおそい まっくら クライ クライ

 どこにあるか みんなしってる
 どこにあるか だれもしらない
 まっくら森は うごきつづける
 ちかくてとおい まっくら クライ クライ

 ちかくてとおい まっくら クライ クライ


「……なにその暗い童謡みたいなの」
「まっくら森の歌」

 影、影、影。
真四角の影。
周囲を取り囲み、たくさんのライトで照らされてるにも関わらず、
確固として、闇の中でなお際立つ黒として存在してる影。

「あんたさぁ……、もう少し元気出せ、ってのは無理にしても
 そんな顔してちゃ普段できることもできないわよ?」
「……わかってる柊」
「エースパイロットがそんなんじゃ、こっちの士気にも関わるのよね。
 シャンとしてなさいよ馬鹿」
「俺はエースなんかじゃないさ……」

 3号機と、初号機の腕を喰らった黒い柱は、
それ以上に黒い、漆黒の、純黒の、究黒の、影へと潜り、
そして消えた。
残ったのは影。
照らしても消えない影。
曰く、あれ自体が、あれこそが、敵の本体で、正体で、胴体で、肉体。
どうしろっていうんだよ……。

 目の前に、あるはずの入り口。
しかし、あやのが搭乗した3号機を含んだ神人が
影の中にその身を沈ませると同時に、
ただの影のように、触れても殴ってもなにをしても、
もう物質をそこに沈ませることをしなくなった。
ただ、消えない影。
そこに見えるのに、あやのには手が届かない。

近くて遠い、まっくらな影。
そこにあるのがみんなわかってるのに、
その先に行く術を誰も知らない。

 どこにあるか みんなしってる
 どこにあるか だれもしらない
 まっくら森は うごきつづける
 ちかくてとおい まっくら クライ クライ

 ちかくてとおい まっくら クライ クライ

「ちくしょう……っ!」

 自分が傷つくのは、怖くない。
戦いだから、いい。良くは無いけど、仕方ない。
覚悟はしてた、大なり小なり。
自分が死ぬのも、まだいい、いいと思ってた。
死後の世界なんて欠片も信じてない俺は、
死んだその先を毛頭信じてない俺は、
べつに、死ぬことは怖くなかった。

 でも、いまは怖い。
死んだとは決まっていないのに、あやのが居なくなったことがこんなに怖いと知ったいまの俺は、
俺が死んだことで同じ思いをする人間がいるかもと理解したいまの俺は、
死ぬのが怖い。
自分の存在が消えるのが怖いんじゃなく、その後の残された人間に傷を残すんじゃないかと、
ただ、ひたすらに、怖い。
自惚れでも、怖い。

 俺は、戦えないかもしれない。
 そして、それで誰かが代わりに傷つくのも、怖い。
 悪循環、最悪だ。

 殴られた。
拳で、頬を、思い切り、振り上げて、振り下ろし、振りぬいた、拳。
ガツンと、力強く、圧倒的な、暴力で、殴られた。

「しっかりしろよ! 前を向けよ!
 お前はいままで初号機に乗ってどれだけの事をしてきたよ!?
 よく見ろよ! 今回が特別じゃない! いままでだって毎回誰か死にそうになったけど!
 でもみんな生きてる! 誰も死んでないでここまできたじゃんか!
 諦めんな! ふざけんな! 死んでるかもしれないけど、それって生きてるかも知れないってことだろ!?
 なんで下みてんだよ! まっすぐ立てよ! みんなが助けるために色々やってるなかで
 一番あやおの近くに居たキョンが諦めてどうすんだよ!
 最後まで信じろよ! みんながいままで信じて! 頼って! 信頼してたお前はどこだよ!?」

 柊の、熱い言葉、しかし俺は少年漫画かよ、
とか、そんな捻た感想しかでなかった。
言い返すことも、殴り返すことも、睨み返すことも、なにもせず。
闇夜の中、人工の光で照らされる街を、周囲を見渡して、立ち上がる。

「一回、信じさせたら、最後まで信じさせろよ。
 最後まで、貫いてみせろよ……」
「信じるってのは、裏切られてもいいってことだろ。
 俺は信じてくれとか言ってないし、信じてもらえるようにがんばったわけじゃない。
 ただ、がむしゃらだっただけだ」
「馬鹿!」

 駆け出して、そのまま行ってしまった。
そして俺は取り残された。
柊に、しがらみに、流れに、世界に、なにに? 自分に?

「……いてて」

「……平気?」
「ん、長門居たのか」
「……」
「ま、大丈夫だろエヴァに乗ってりゃ一時間で治る」
「そう」

 黒い空。黒い影。
そんな中、白を基調にしたプラグスーツを着ている長門は、
少し、浮いて見える。
直立不動、地に対し垂直を保つ長門の姿勢が、
それに拍車をかける。
……少し、腫れてきたかな、頬。

「大丈夫?」
「ん、今度はなにがだ?」
「……色々」
「色々…、ねぇ。大丈夫だったり、そうじゃなかったり、だな」
「そう」
「あぁ」

 悪循環の最悪。
それは取り消すつもりもなく、撤回するつもりも無いが、
しかし収穫もあった。
こなたや、喜緑さん、みんなは司令部で、こんな気持ちで居るのかと、
少し、感慨もあった。




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