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魔法少女「どうして男の人なのに魔法を!?」

古いのもあってそれを記すのは若干恥ずかしいので
最新更新分辺りだけを... Read more ▼ クリックに載せておきます
先んじて言っておきますが、かなり厨二病です
 三つ編みの少女と同機する。
魔力を一定値に保ち少女達のSearch能力を高めて感じる。
魔力の奔流に黒い髪ゴムが切れ、漆黒の髪の毛が宙を翻弄する。
長い、少し縛り癖のついた長い髪は、
ウェーブをかけた元魔女のあの少女のようだと思った。

 共鳴指数が上がり淡く周囲が発光する。
そして閉じたまぶたに浮かぶ陰、姿、場所、景色。
黒葉の情報が次々と流れてくる。

 敵意、こちらのアクセスに反応して行動を起こしたのを感じる。

「来るぞ」

 同じ映像を見てた三つ編みが黒葉の魔翌力に呼応すれ。
光を見せ周囲に後光の如く筋を放つ。

「目印か、マークされた。もうこの場の人間は逃げられない」

 きらきらと光の残滓が散ってく中、
この場にいた十数人の魔法少女達は一気に恐慌状態へと―――

ならなかった

 全員が杖を掲げ、衝撃緩和敵魔法減衰効果のある
加護のローブをしっかりと羽織る。
ある者は結界を重ね、ある者は仲間達に守護の魔法をかけ、
ある者は数多くの神人を召喚し、またある者は魔法の威力をあげる補助魔法を唱える。

 誰一人戦いから遠ざかる者はいない。

「なに茫然してるのよ」

 砂の魔女が微細な砂の鎧を纏い、
砂の剣を持ってこちらを睨む。
彼女の周りの空気は黄砂の酷い時のように茶色に染まっていた。

「こちらから打って出るまでも無くやってきてくれるのよ?
出無精なあなたにはよかったじゃない」

 砂の山に手を突っ込む彼女、
ゆっくり引いて行くとその手には砂の槍が握られている。
槍の矛先をこちらに向けて笑う。

「私が死んだあと、もし妹に会うことが合ったら。
あの娘のそばに居てあげて」

 お伽話にでてくる最悪の改悪の罪悪の害悪の、
究極の破壊魔黒葉。

 仲間を、友人を、家族を殺された彼女等は
何故、依然毅然と奮迅できるのか? 自然超然と立ち振る舞えるのか?
不思議だった。

「なにみてんのよ」
「死ぬな」

 不思議で不可解で不完全で不安定なその彼女達を
しかし俺は尊いと、

「おまえは美しい、決して死ぬな」

 綺麗だと思った。

 一瞬で彼女の顔が紅潮する。
動揺した様子でこちらに向けたままの槍を振り回す、
目の前に迫る鋭い矛に咄嗟に刃のない部分を掴む。

「い、いきなりなによ…。もしかしてさっきの家にこいっての――」
「お前も、死ぬな。みんな死なないでくれ」

 こちらを見ていた三つ編み少女の頭に手を置き、
すべての魔法少女達に言い聞かせる。

「戦いに生き残る事は戦死者達に対して不遜なんかじゃない、だから生き残れ」

 言い終えると同時にいきなり背中を砂の槍で突かれた。

 なにをしやがるこの女朗と背中を突いてきた
砂の魔女に文句を言うために振り向こうとして。
       ・・・・・・・・
 既にそこにはなにも居なかった。

 人間など存在せず、閃光と、散り行く砂の欠片だけがその場に遍在していて、
次いで離れた場所で何かが跳ねる音がした。
強く叩きつけられ、アスファルトに身体をぶつけ転がる
砂の魔女の無惨な音がした。

「…は?」

 状況把握に使った時間はそんなに多くなかったと自覚してる、
砂の魔女はある"圧倒的な力を持つ敵"によって
7メートルもの距離を一息に飛ばされ、呻き声も聞こえない距離で倒れている。
衝撃で砕けた砂の鎧が魔翌力によって自動修復されてるのが、
彼女が生きてると言う唯一の報せだ。

 砂の鎧がなければ、ざらつくアスファルトにすりおろされていたであろう、
彼女の華奢な肉体があんなに遠くにある。
先程まですぐ後ろにいた彼女が一瞬で吹き飛んだ。

 俺は彼女に駆け寄る――
ような無様は見せず、吹き飛んだ方向の逆に目を向ける。
この事象が発現した大本の術者の方を、向く。


 果たして術者、つまりは黒葉は居た。
電柱と電柱を繋ぐ複数の黒い線、つまりは電線の中の一本に片手でぶら下がり
自らを睨む俺を不思議そうに見下ろしている。

「お前が黒葉か」

 酷く若い、元魔女の少女のような風体をしてる。
圧倒的破壊を振る舞う天災に近い存在としての魔女の正体がこれか。
俺は少々の戦慄を感じつつ後ろ手に治癒術師に砂の魔女の回復をやらせる、
なんだかんだと言っても戦闘力は決して低くない、貴重な戦力だ。
たかが不意討ち程度でリタイアになられては困る。

「兄ちゃんだれ?」

 無闇に舌足らずな口調で喋る黒葉。
こんな者がお目当ての使者なのか?

「人の名を聞くときは、と言う有名な返しを知らないのか?」

 じりと軽く足を後ろに引き下げる、この場は既に結界内なのだが、
意味を成してるとは到底思えない。
平然と存在してくれやがってこの野郎。

「兄ちゃんだれ?」

 こちらの言葉には耳を貸さず、
同じ言葉を繰り返しながら、俺に向けて魔法を放ってきた。

「なめんな!」

 真っ黒な魔翌力の奔流を障壁で防ぎきる、
余波が行かぬように他の魔法少女達は俺の背後に回り
今は揃って攻撃呪文を唱えてる。

 まるで一つの巨大な石柱が突貫してきたかのような攻撃。
それを凌ぎ、障壁越しにわかった、
石柱に見えた攻撃は大量の葉の集まりで、その一つ一つが
葉脈もわからぬ程に漆黒の様体を然していた。

「あはっ、兄ちゃん凄いね。一緒にあそぼ!」

 まるでこの状況を楽しむかの様な場違いな声質、
愉快げな言葉を放って少女黒葉は電線から手を離す。
ポテッと軽い音がして着地する黒葉にすかさず先程から張り続けていた
魔法障壁を解除して背後の魔法使い達に合図を送る。
 ファイア
「発射!」

 魔法少女達、それぞれの得意魔法が光となり
地にしゃがみこむ黒葉に向かって伸びる。
炎魔法によって黒き葉が焼かれる。
雷魔法によって黒き葉が焦がれる。
光魔法によって黒き葉が貫かれる。
氷魔法によって黒き葉が砕かれる。

 複数の魔法がタイミングをずらして黒葉にぶつかる。
最後の術者が終わるまでに最初の術者が二射目の詠唱を完成させ放つ、
その繰り返しを黒葉のその小さな身体に叩き込む。


 その光景を二秒も見れば気がつくだろう。
少女黒葉の存在する座標と攻撃魔法が直進し、ぶつかり弾け濃煙をあげてるそれが異なることに。
これだけの速射砲の如き魔法の束が掻き消されてる。
恐らくはなんの魔法でもない、ただの黒葉の魔翌力の放出によって、
ゆっくりと着弾点はこちらに近づいてくる。

 無傷、着ていた服や肩にかかる髪、
砂塵やあの黒い葉、ただの緑葉ですら、
少女黒葉の掲げる右腕の向こうにあるものは完全無欠に無傷だった。

「んとね、君達邪魔かな。兄ちゃんとだけ遊びたいかな」

 魔法が発動する音に弾ける音。
さらには詠唱の声等も混ざり微かにしか聞こえなかった言葉、
微かにしか聞こえなかった為に判断に一瞬以上の時間を要してしまった。

「えいっ」

 だから、俺は背後の少女達を護ることも注意を促すこともできずに。
軽い声を発して目の前で散る魔法の出先の少女達を軒並み吹き飛ばす黒葉を見てるだけしかできなかった。

 なにをした訳じゃない。
構えていた右手を一度くんと押し出す、それだけの動作で
少女達が放っていた魔法は逆流し術者自身を薙ぎ払う。
酷く無造作に粗く無尽蔵に黒葉はあの数の魔女をたったの一動作で戦闘不能に追い込んだ。

 棒立ちだった。
魔法を唱える暇もなく、自軍の兵を一撃粉砕された。
少女黒葉、圧倒的じゃないか…。
今のまま、のんべんだらりとした生活での戦いを熟していた自分では勝てない。
自分も命を懸けてまるで漫画のように血へど吐くまで戦うつもりで挑まなくてはならないだろう。

 後方で治癒に専念していた術者と治癒を受けていた砂の魔女。
そして右方で俺の結界の補助をしていた、三つ編み少女、
残ったのはたったそれだけ。

「兄ちゃん、なにして遊ぶ?」

 にこにこしながら、その小さい身体の周囲に黒い葉を発現させる。

「ちょっと待て…」

 地に伏せる少女達を担いですぐそこの自宅の敷地に運ぶ。

 狭い敷地に身体を焼かれ、焦がれ、凍り、貫かれた少女達を横たえる為に
黒葉に背を向けて少女達を背負い歩く。

「お前らも入ってろ」

 俺の言葉を初めて聞き、黙って待ってる少女黒葉を感じつつ生き残りに言う。
どうしようもない強さだ。しかしこの敷地に入れば、少なくとも魔法による干渉は受けない。

「嫌よ、なに言ってんの馬鹿」

 治癒が終わり完全に復活した砂の魔女が、
微細な砂で構成された短剣を二本両手に持ち、
治癒術師の背中を押して敷地に入れながら言う。

「提案は有り難いですけど、私も辞退します」

 三つ編みが空中からいままで使ってなかった木製の杖を取出し構える。


「…勝手にしろ」

 そういって傷ついた少女達を敷地に降ろすのと、
ほぼ同時に黒葉が凄惨な笑顔で叫んだ。

「ひゃく!」

 ぐしゃ、とかそんならしい音などなくて。
そこにはただ事実としての結果しか無かった、
もしくは結果としての真実しか無かった。

 結界の中の結界、敷地に巡らされた俺の魔法陣。
その中にいた魔法少女達が赤く紅く朱く染まった。

「ひゃくまで数えた鬼がきた、兄ちゃん逃げないの?」
「……んなぁっ!!」


 行為が、認識を、超越した。
返り血を浴びた俺はほとんど無意識に、
跳ね上がり塀に立つ黒葉を破壊するためだけに力を奮った。

 平然と立っていた黒葉の側頭部に回し蹴りの要領で膝を叩き込む、
身体強化の魔法を付与された蹴りはアスファルトを容易にぶち破る
破壊力でもって幼い天災少女の頭を吹き飛ばす。

 吹き飛ばし、即刻飛んでいった黒葉を追いかけるように自分も跳躍する。
地面に跳ね返り打ち上がるその身体に指を組み合わせた両手を振り下ろす。
地面が陥没し黒葉の身体を飲み込む。
さらに追撃、炎の魔法の射手、千一柱をクレーターに叩き込む。

土煙、舞い散る火の粉、砕けるアスファルトの音。

「え?」

 俺が正常な思考を取り戻したのは、
ほとんど堪えた様子の無い黒葉が飛ばした鋭い氷弾が
眼前に迫ってやっとだった。

「馬鹿!」

 次いで視界に入る一面の砂塵。
あの魔女の多量の砂が俺と氷弾の間に分厚い壁となって現れる。
防げやしない、それでも時間稼ぎにはなった。
本来ならどたまを粉微塵にされるところを辛うじて避けることが出来た。

 着地、移動、着弾。
それが一瞬で交差する。
黒葉はその刃のベクトルを俺の後方の魔女二名に向ければ
それで終わるというのにそれをしない。
きっと黒葉自身の計算。
自分に人質など意味が無いから、されたことがないから、
刃を魔女に向けて放ち命を絶つまでに俺が黒葉を殺せるから、
だから魔女二人を狙わない。
俺がそういった状況になった場合黒葉を殺すのではなく
二人を守るという行動にでるとバレたら、それは変わる。
俺は流れ弾でもなんでも、二人に攻撃が飛ばないように注視しながら。
飛んでくる氷弾を飛んで交わし、隙をうかがう。

 時折危うい物もないではないが、
そこは微細な砂の粒子が強固かつ堅牢な壁となり防ぎ
三つ編みの少女が攻撃魔法減退の補助を欠けて時間を作る。
その間に俺は火球を、光球を、闇球を、雷弾を、氷弾を、砂弾を、
幾つもの属性の魔法をアトランダムに組み合わせた即興魔法を打ち込む。

 本来、魔法を打ち消すには同威力以上の魔法、
ないしは上位種の魔法をぶつけるか。
もしくは同種属性の防御結界で防ぐか、上位のフィールド魔法で打ち消すか。
多岐にわたっての色々なプロセスがそこには偏在する。
つまり魔法を打ち消すにはその魔法と同じ属性の攻撃、防御で相殺するか。
その魔法より威力の高い高等魔法(この場合高いが被っているが、下位種よりも威力の低い
高等魔法がこの世には存在するのであえてこの様に表記させてもらう)で
打ち砕くか耐え切るかしなくてはならない。

 つまり同程度の能力の魔法使い同士の場合、
相手の魔法の属性を見極めて、
同種もしくは水なら炎といった相対属性の防御壁を適時展開しなくてはならない。
万能魔法壁もあるが、しかしそれは高位の魔法でしかも一段ランクのさがる魔法としか拮抗できない。


 長々と魔法について語ってみたが、
つまり俺がなにを言いたいのかといえば唯一つ。
アトランダムに予想ができない魔法を亜音速で複数ぶつけているにも関わらず
俺の魔法は全てが全て黒葉に当たることなくかき消されている。
これは黒葉がその外見からは想像できない程に人間離れした高い演算能力を持って
俺の魔法を各個撃墜してるのではない限り。万能魔法壁で消滅させてることになる。

 そしてそうだとした場合。
俺と黒葉の実力差はその魔法の意味合いから推測できるように
ワンランク、一回り以上の差異が存在してると言う話になる。
べつに俺だって持てる魔力を、知りうる魔術を、
最大限に使った最高位の最強魔法を最速で打ち込んでいるわけじゃないが、
しかし手を抜いているわけでもない。
俺の攻撃の全てが個別防御でもないただの防御円陣で消されてるとなれば
これはかなりの問題だった。

 バク転、バク転、バク宙とつないで距離をとり、
支援に徹していた魔女二名と並び息を整える。
動かずにその場で攻撃を散らしてこちらに魔法を放つ黒葉と違って、
俺は耐えずに走り回り、しかも運動で多量に消費する酸素を
さらに削ってまで魔法の詠唱をこなしている。
全身の筋肉に溜まった乳酸が疲労となって多大な倦怠感を醸し出す。

「化け物だな、誇張なしに」
「私から見ればあんたも十分化け物よ。一人で全ての属性を唱える魔法使いなんて始めてみたわ」
「私も長らく情報監査部に居ましたがはやり初見ですね」
「そうかい…」

 肉体強化により体術の基本的動作が極限まで威力が上がり、
ただの突きは鉄塊を貫き、その筋肉は弾丸を防ぐ。
万能防御壁によりこちらの魔法は全てが全て打ち消され、
結界内だと言うのに黒葉の攻撃は減衰した様子は無いとは言え、
しかし相手の魔法を掻い潜って直接的な暴行を行おうとダメージは見込めない。
恐らく長きに渡り使われた年季の入ったきこりの斧でも黒葉の細い首を撥ねることは叶うまい。 

「で、どうすんの?」
「なにがだ」
「私達三人だけでどうにかなるの?」
「無理ではないが無茶だな」

 『どうにかする』が黒葉が今後斯様な破壊活動を行えないようにする
そういう意味ならなんとなる、気がするが。
『黒葉を殺し、なおかつ自分たちが生き残る』という所謂一般的な勝利を意味するものであれば
それは不可能に近い。

 だけれど、ここでそれを素直に言う必要は無い。
今の俺は、柄じゃないけど、司令塔。
リーダーは、なによりも先に、味方を気遣わなければいけない、
士気を高め、それを維持するのはなによりも先決。

「無茶だから、できないこともない」
「それはできると取っていいの?」
「好きにしろ」

 ニコニコと、こちらを伺う黒葉。
あまり積極的に攻めるつもりはないらしい。
余裕か無考か、まぁいい。

「……ふぅ」

 肺の空気を全て吐き出す。
喉が痛くなり、酸素が足りなくなり、自分の身体が限界だと苦しさを訴えるまで、
空気を全身から体外に吐き出す。

「え? ……な、なにこれ?」

 砂の魔女が、慌てふためく。

「これは、魔方陣……? しかしこんな巨大な陣は初めて見ました……」

 三つ編みが、辺りを見渡してぽつりと呟く。

「んに?」

 黒葉が、戸惑ったように首を傾げる。

 結界の魔方陣に重ねるようにして隠蔽していた、
ステルスを加えた独自開発した極大魔方陣。
まさかこんな形で使用することが、
いや、そもそもこの魔方陣を発動させることそのもの自体が、起こるなんて思わなかったが、
しかし備えあればなんとやら、だ。
この地域全てを飲み込むほどの巨大魔方陣。
そして呼応するようにゆっくりと俺の両腕、手の甲、額に浮かぶ紋章。
準備は、整った。

 紋章が、光が、じわじわと身体を侵食し、
それがつま先まで到達した瞬間、俺は跳ねた。
音速を超えた速度で、黒葉をそのスピードのまま轢く。

 ギィンと、肉体同士がぶつかったとは思えぬ音。
金属音、鈍い、破壊音。
黒葉はいくら肉体を強化しようと、
いくら巨大で強大な魔力をもっていようと、
体躯は幼い少女のもの。
軽い肉体は多大なエネルギーの衝突を受け
慣性に従いものすごい勢いで飛んでいき、
ブロック塀を粉々にぶち抜いた。

 そして俺の左腕は衝撃で砕けた。
粉砕骨折、というのもおこがましい、
皮が破れ、肉が裂け、骨が砕け、見るも無残になっている。
しかし、それも一瞬のこと、残った肉体の紋章が光、肉塊はまた腕に形作られる。

「な……、なっ……、なによこれ……」
「……まさか、これは」

 砂の魔女は、絶句し、
三つ編みは、なにかを理解したように焦燥する。
でも、こうしなくては、奴は倒せない。
あのままでも、引き分けることくらいはできただろう。
だが、それじゃダメだ。
沈静化させるには、圧倒的に倒す必要がある。
絶対に。

「いっつ…ぅぅ」

 初めて、黒葉が痛みを訴えた。
このチャンスを逃すわけにはいかない。
瓦礫をガラガラと崩しながら立ち上がろうとする黒葉に、
俺は再度跳躍、勢いそのままに膝を顔面に叩き込み、
黒葉は仰け反るようにまたもブロック塀を軒並みに崩しながら吹き飛ぶ。
さらに追撃。いままでの礼を返すように、俺はまだ滞空してる黒葉に追いつき、
組んだ腕をその無防備な腹に打ち下ろす。

「ぐっ…!? がっ!」

 アスファルトに大きなクレーターができ、
その中心に黒葉が横たわる。
俺の身体も、この二撃で右足の膝から下と両腕の手首から先を一時的に消失した。
痛みは、激しくある。

「リーダー! 彼をとめてください!」
「え? で、でも」
「このままじゃあの人は! 確実に死にます!」

 轟と黒き葉の奔流が俺を襲う。
最初の攻撃と同じ、威力は段違いの、黒き石柱のような葉の塊
それが俺に向かって飛んでくる。

「邪魔だっ!」

 手刀一閃。
それを切り裂く。
流石にこれだけの魔力の塊を対処しようとすればバックもただでは済まず、
肩を根こそぎ、首元近くまで吹き飛んだが大丈夫。
一定を超えた痛みは脳が遮断する。
脳内麻薬がなければ、下手すればショック死してしまう。

「ぐぅ、な、なんなの、お兄ちゃん……。急に変わって怖いよ……」

 クレーターから、垂れる鼻血にも構わず立ち上がる黒葉。
目で見て取れるほどに、疲労していたその姿。
勝てる、このまま力押しすれば、こいつを、倒せる。
そして俺も、同時に…。


「あ゛あ゛あ゛あ゛!」

 最後に喰らった腹をかばうような立ち方。
それは自然蹲る様な、くの字型になってるわけで、
非常に狙いやすいその腹に俺は再度、
掌底をアッパー気味に繰りだす。
軽くとも、硬い黒葉の肉体。
今度は肘まで、持って行かれた。
感覚が、麻痺しきっている。

「早くリーダー!」
「どうやって……? いまのあいつは、黒葉と同じ、私達にはどうすることもできない、化け物よ。
 それだけ強い力があって、なおかつあのまま死ぬなら、黒葉もあいつも居なくなるなら
 それが最善の、平和に最も近い姿じゃない……」

 鮮明に聞こえる声。
聴覚も、いまは半端でない。
でも、どうとも思わない。
それは感覚がどうこうではなく、理性的に考えた上での話。
正しい、この上なく、正しい。
勇者は、英雄は、魔王を倒した後の世界で、
残った普通の人々にとって、新たな恐怖の対象でしかない。
それは定番で定例で定型だ。
俺は英雄ではない、英雄ではないから、より一層、第二の魔王になるだろうから。

 暗い、昏い、思考に支配されかけた俺は、
それをそのまま宙に浮く黒葉にぶつけようと、
膝を曲げ、飛ぼうとした。

 が。

「それは違います!」

 三つ編みでも、
 砂の魔女でも、
 黒葉でもない、
 しかし最近聞きなれたばかりの声が、
 それを否定した。

「お前……」

 元魔女、現少女。
俺の家に居候していた砂の魔女の妹。
そして黒葉に唯一遭遇し生き延びた人間、だったか。


「すきありだよ!」
「しまっ!?」

 ひょう、と空気を裂く音。
黒い、しかしずいぶんと威力の下がった攻撃。
だが今の俺を倒すには余りある威力の攻撃が
少女の登場によって呆然としていた俺に向かってくる。
同様に、動揺していた砂の魔女と三つ編みも、間に合わない。

 それでも、攻撃は俺に届かなかった。
俺が魔力を封鎖していたはずの、
元魔女の筈だった少女の魔法によって、
俺はまたも生き残っていた。

「……えへへ。最後に術式更新したの、いつだったでしょう?」

 ……そういえば、最近はしていなかったように思う。
ならば、少女は、魔力が戻ってなお、
それを隠してあえて俺の元にいたというのか。
多少なりとも、それに歓喜を覚えてる俺がむかつく。
死ねばいいのに。

「うぅっ……、またダメかぁ……」

 紋章が、じりじりと俺にフィードバックとして
熱を伝え痛みを喚起し始めると同時に、
先ほどの攻撃を防がれた黒葉は困ったように呟く。

「負けを、認める、か?」

 情けをかけるようなポーズ。
しかし俺自身も息絶え絶えな体調。
多分、後一撃、この紋章の力で黒葉を殴りつけたら、
もうその際に砕けた身体は戻ることは無いだろう。
正直、今現在も全身に焼け付くような痛みが走っている。
このまま術式兵装を解除しても、一週間は安静にしてないと厳しいし
二週間は魔法が使えないだろう。

「うぅぅ…、どうしよー。もう魔法使えないよぅ」

 鼻血を手の甲で拭いながら、
涙目で、涙声で、ぐすぐすと、年相応の少女のように言葉をつむぐ黒葉。

 それをみて、俺は嘆息を付き。
兵装を解除した。
とたんに全身に疲労感と倦怠感とが溢れ、
さっきまでとは比べ物にならない
痛みと熱さと辛さと苦しさが襲ってくるが、
それでも、倒れないように、歯を食いしばり、
結局ダメで、倒れこんだ。

「あっは、はは……。情けねぇ」
「格好よかったですよ」
「そら、重畳……」

 倒れた俺に、いの一番に駆け寄ってきた、居候の少女。
そして困惑から抜け切れない砂の魔女と三つ編み。

「だ、大丈、夫?」
「ぎりぎりでな」
「というか、あんたの家に居たんだ……」
「うん」
「だから、死んでねぇっつったろ」
「ところで、お姉ちゃんはいつから私のお姉ちゃんになったの?」
「そ、それは…。話の都合がいいから…」
「ふぅん――うぅん?」
「いま、治癒しますから…」
「あぁ、そうしてくれると助かるかな」

「で、あなたはどうしますか黒葉」

 三つ編みは、俺に治癒を施してから、
少し離れた位置でこちらを眺めている黒葉に声をかける。

「まだ、戦いますか?」
「う~ん。……ううん、やめとく。
 なんか最後は楽しくなかったし、痛かったし、お兄ちゃん怖かったし、もう嫌」
「……そうですか」

 軽く、三つ編みが微笑んだ気がした。
俺は、膝をついて、少女と砂の魔女の二人の肩を借りてなんとか立ち上がる。
黒葉は、そんな俺をじぃと見つめている。
もう、凶暴さや、粗暴さや、険悪感や、恐怖感はない、
そこにいるのはただの少女で、俺が全力で殴りつけた少女だ。

「じゃあ、どうする? 戦うの、つまんなく、なったんだろ?」
「……うん、多分、そうかな」
「なら、どうする?」
「どうしよう……? 困ったね」

 俯いて、頭を抱えていまにも泣きそうな黒葉に
俺は自然にこの言葉を口にしていた。

「……うちに、来るか?」

「なっ!? ちょ、あんたなに考えてんの!?」

 肩を借りている砂の魔女が、速行で反応した。
俺に向き直るように怒鳴ったため、かけていた腕がはずれ、
砂の魔女が居た場所に、膝かっくんを喰らったようにぱったりと俺は倒れた。

「いてー……」
「あ、ご、ごめん……。じゃなくて! あんたこんだけ死闘しといて
 その相手の面倒みるつもり!? そんなボロボロになって!?」
「いや、敵が仲間になるのは、漫画の定石だろ?」
「馬鹿!」

 怒鳴られる。
ひたすらにどなられる。
けど、三つ編みと少女は、どこか呆れたようにため息をつくだけで、
砂の魔女に加勢する様子は見られなかった。

「まぁまぁ、リーダー。その人はそういう人柄みたいなんですから、任せましょうよ」
「で、でも!」
「あなたは、どうしたいんですか?」
「ん、私は……、それも、いいかなって、思うな。楽しそうだね!」

 疲労困憊から立ち直るのが異様に早い黒葉。
もう元気に俺の申し出に乗って軽くはしゃいでる、
傷は治ってないようだが、多分もう魔法は少し位ならつかえるのだろう。
改めて、異常なアビリティだ。

「あっそ……、もう勝手にしてよ」
「なに言ってんだ、お前も、一緒だぞ? 三つ編みも、こいつも、合わせて住めば良い
 それくらいのスペースはあるし、その方が、楽だろう」
「はっ!? なんで私まで!」
「先刻、言ったと思ったが? こないか、って」
「イエスと言った覚えは無いわよ!」
「勝手にして構わんのだろう? なら素直に従えよ」
「あんたねぇ……」
「まぁ私は構いませんけど?」
「私も、いままで通りだし」

 一人反抗していた砂の魔女も、
三つ編みと少女の二人が反対していない事に
むしろ賛同しそうな勢いなのを感じたのか、
二、三呻いて、なにかを言おうとして口を閉じ手を繰り返して、
そして不承不承、渋々といった感じに承諾した。

「あとは、後片付け、だな」

 結界でいまは一般人を完全に人払いしてあるが、
吹き飛んだ塀に民家、砕けたアスファルトの道路や折れた電柱、
燃えた常緑樹に凍った地面にばら撒かれた砂に焦げた痕跡、
全てを元に戻さなくてはならない。
祭りのあと、じゃないが、後片付けがなによりも大変というお話。

―――

 あれから、三時間かけて全てを修正(やはりというか
圧倒的に回復速度の速い黒葉がその魔力で持ってして大半を直した。
俺も砂の魔女も修繕系の魔法は得意でなかったし、そもそも魔力がどいつもこいつも
ほとんど残ってなかったのが問題だ)して、

 最初に黒葉に半殺しにされて
野ざらしに放置されていた他の少女達を治癒して、
彼女達に事の次第を伝えて(この説明の場には黒葉は外させた。
彼女達は、あの三人よりも深く黒葉に対する恐怖やなにやらが根付いてる
だろうから。簡潔な事象と結果を伝えるに終えた)。

「流石に、お前たちまでは俺の家に匿えないが、
 住居を用意するくらいはしてやる。
 あとは、普通に生きていけば良い、好きにしろ」

 そういって、十人以上の残りの少女達に別れを告げ。
結界と魔方陣を解除して、
朝方になって鳥の鳴き声が聞こえる時間になって
ようやっと全ての事態は収束し、終息した。

 いくら治癒をしても、外傷でも内傷でもなく反動、
全てが終わる頃には俺の身体はうんともすんとも動けなくなっていた。
それでも、生きているだけ、まだマシか。

 これにて、一件落着。
そういうことで、片が付いた。
色々なしがらみに、様々ないさかいに、浦々なとまどいに。

 倒れ、この一連の流れで知り合った魔女達に支えられながら、
俺はぎりぎりで自分の意思で動く顔の筋肉を総動員して、
引きつった笑顔を形作りながら、言った。




「じゃあ、家に帰ろうか」

―――

 後日談というか、今回のオチ。
俺はいつものように少女に起こされて目を覚ました。
肩を掴んで軽く揺すり、耳元で「起きてください」と囁く
その起こし方は毎度くすぐったくていけないのだが、
それをやめさせようとしない俺もいる。
本当死ねばいいのに。

 起きてからすぐに全身の骨を一本ずつ鳴らして
身体をほぐしてから、顔を洗い、歯を磨き、
そして寝癖を整えてリビングに向かう。
と同時に香る食指をそそる匂い。
扉を開く音に反応して料理をする三つ編みがこちらを向いて
「おはようございます」と微笑んでみせる。
俺は軽くそれに答えて先に机についている砂の魔女の向かいに座り
ニュースが流れているテレビを見ながら軽く彼女と会話をこなす。

 「お待たせしました」とすでに並んでる食器に
三つ編みが盛り付けをし終えると同時に、
パジャマ姿の黒葉がリビングに現れ、
眠たそうな瞼を擦りながら「おはよー」と言いながら空いた椅子に座り、
俺の次に黒葉を起こしてきた少女が次いで入ってくる。
砂の魔女は黒葉に対して「せめて着替えなさいよ」とか言って、
三つ編みは「まぁまぁいいじゃないですか」と宥める。
いつも情景、毎度の風景。


 みんなで席に座って「いただきます」と声を揃えて食べ始め、
これは美味しいとか、味が薄いとか、
調味料とってとか言いながら、雑談に花を咲かせる。
そして今日の料理担当の三つ編みが
明日の担当の砂の魔女にリクエストをして、
「おねがいしますね」「はいはい、わかったわよ」なんて会話を混ぜたり。

 たまに黒葉が好き嫌いを起こして「これ食べて」とか俺の皿に
なにかを移動させて「なにやっての!」って砂のに怒られる。
微笑ましい、初々しい。

 他人から見れば、家族ごっこ。
くだらない、馴れ合いの行為にもみえるだろう。
そしてそれは間違いじゃない。的を射た発言だ。
これは馴れ合い、そして舐め合い。
圧倒的少数となった特殊な人間のコミュニティ。
儚く、虚しく、切なく、哀しく、そんな家族ごっこ。

「どうしたのよ、箸止まってるわよ?」
「どうしました? 嫌いなものとかは入ってないですよね?」
「お兄ちゃん?」
「なにか考え事?」

 ちょっとした、考為にも敏感に反応してくれる。
それは、嬉しいようななんというか、
だけど、少なくとも一つは言える事がある。
俺はこの生活が好きだ。
そしてその理由も、一つだけ確実に言える。
好きなことの理由は嫌いな物の理由を答えるより難しいというが、
それでも一つだけなら、なんの躊躇も逡巡もなく言える。
好きな理由は、間違いなくこの少女達がいるからだということ。

「いや、幸せだな……って」

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    ̄ ̄ ̄二二ニ=-
'''''""" ̄ ̄
           -=ニニニニ=-


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