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僕等は「USB」と「平塚」に捕らわれているようです 3ファイル目

僕等は「USB」と「平塚」に捕らわれているようです
僕等は「USB」と「平塚」に捕らわれているようです その2

8/27 追記

―――

 そろそろ夏だな、とか思ってみる。
僕はどちらかというと夏より冬が好きな人種だ。
冬は厚着をすれば暖かく過ごせるが、
夏は全裸になっても暑いのだ。
僕は鰐待のように冷風機など持っていない、
どころか扇風機すら所持していないのだ。

「好きなときに遊びに来ていいぜ? 家近いんだからよ」
「むしろ泊まらせてください。寝苦しいのが一番辛いですから」
「べつに構わんけど、ベット一つしかないぜ? 一緒に寝るか?」
「非常に魅力的な提案ですが辞退します。以前骨を折られかけましたから」
「あぁ、そんなこともあったなぁ」
「ので、深夜の内に毛布の一枚くらい持ってきますので」
「あいよ」

 そこまで話して、背中をどんと強く押される。
背中を、というか位置的には肩に近い場所。
振り向いて見てみれば睨む様な瞳、
たったこれだけ世間話をするのも堪えられないらしい。
ちょっとした世間話は真剣な話をする前に必要な潤滑剤だというのに。
「鰐待」
「なんだ? …っていうか、まぁそっちの見知らぬ誰かの関係なのはわかるけどよ」
「話が早くて助かります、正直僕には手に負えません。…あいたっ」

 僕の後ろに控えていた桃透絶ナは、
その台詞を聞いた直後に僕の背中に蹴りをくれる。
腰の入った良い蹴りである。

「折り入って頼みがある」
「私に、頼み?」
「この場合はお前たちだ。お前たちに、だ」
「私達、に、ねぇ」

 向かいあう僕と鰐待、そして…桃透絶ナ。
一々フルネームで呼ぶのも面倒なのでこれ以降は
彼女が望んだのもある為、絶ナと呼ばせてもらう。
昨日、僕の前に唐突にやってきた絶ナのした荒唐無稽な話、
当然鵜呑みにするわけにもいかない僕としては
とりあえず判断材料を増やす為に、
そして判断するための時間を増やす為に、
鰐待を呼び出して絶ナに会わせることにしたのだ。

「…ようするに、だ。お前はなにがしたいんだ?」
「なにがしたい。なにがしたい、か。それは目的を聞いてるのか?」
「あたりめーだ」
「ふぅん、なるほど。私の目的か。私の目的はだな」

 勿体ぶってそこで一拍ためる絶ナ。
厳かな雰囲気やその服装(先刻は少々戸惑いもあり描写し損ねたが
彼女は和服をきっちりと着込んでいる。いまさらながら
そんな彼女が優雅にティーカップで紅茶を飲むというのは如何なものかと思う)も
相まってどうにもこちらが飲まれそうになる。

「この平塚という都市の廃棄、かな」

―――

 暗闇、と評するほどのものではない。
彼方此方窓だらけの車両の中である。
それはそれは月明かりや星明りが、
適度な暗さと適切な明るさを保ってくれている。
頼みもしないのに。
……とりあえず、そんな程よい明度の車内(?)で、
僕と鰐待は床を共にしながら、静かに会話を連ねる。

「なんかさ、自分の中にこんな純粋な部分がまだ残ってたんだと驚いた」
「……あれですか」
「そ。まさか私が、あんな荒唐無稽な話一つで寝付けなくなるとはなあ、
 小学生かっつの私は、くだらねぇ」
「確かに、突拍子のない話ですね。そして脈絡もない」
「ついでに真実味もねぇな」
「ま、興味はありますけど」
「それは――、そうだな」

 鰐待は、微笑しながら少し離れた位置の、
この車両が電車としてまだ活動していた頃の名残たる座席に横になり
静かに、文字通りスリープしている桃透絶ナを見遣る。
その隣で僕は、黙って目を瞑り息を吐き出す。
着色されれば寒色系、それも黒寄りの色で塗られるであろう吐息が
気分悪く宙を漂って混ざる。

「……おい、抹茶」
「…………なんでしょうかね列車ちゃん」

 まともに呼ばれたのは何時振りか、
そしてこんな呼び方したのは何時ぶりか、
後には変な沈黙しか残らなかった。

「…やっぱいい、寝んぞ」
「了解です」

 頼んでも居ないし、望んでも居ないのに、
月と星は、寝返った鰐待の後姿を僕に見せ付ける。
僕は、目を閉じて、黙って背中を向けた。
それは、現実逃避だったのかもしれないし、
そうじゃないのかも知れなかった。


―――

 
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