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P「逆ドッキリ…ですか?」 小鳥「はい!」 2


「……またですか」

 げんなりとした調子で小鳥さんに僅かな期待を持って聞いてみる。

「はい。またです!」

 溌剌といした調子で俺の僅かな期待を小鳥さんは裏切る。

「で、今度は誰ですか?」

 前のやよいで個人的には相当懲りて、
もうできれば勘弁していただきたいというのが本音なのだが。
昔とった杵柄の演技力で場を混乱させてばかりの発案、企画等を行う彼女は
まるで意に介せずといった様子でいきいきとしている。

「今日は確か貴音ちゃんが昼のレッスン後に一人になるはずですよ」
「……貴音、ですか」


                                       ―――貴音編

「という訳で私はいつも通り嘘のドッキリ企画をメールで教えておきますんで、
 プロデューサーさん。今日も名演技期待してますよ」

 パチッと年を感じさせない(と口にしたら最後なので決して表にはしないが)、
可愛らしいウィンクをして嬉々として貴音に偽りのメールを送る小鳥さん。
この人には罪悪感とかそういった物はないのだろうとここ数日で確信している。

「はぁ……上手くいくのかねぇ……」

 正直言って、あまり上手く行くとは思えない。
貴音が無視しても、なんというか普段のミステリアスな雰囲気を考えれば
そこまで大きな変化を感じれない為、それに怒る自分というのもまた想像できないのだ。

 ともかく、全員にやるまでやめる気が無いであろう小鳥さんだ。
どうにかこうにか残りの時間で流れを考えておかなくては……。

「ううむ……」

 などと考えてはみるものの。
貴音について俺が知っていることなどラーメンが好きで、
月が好きで、そして神秘的で魅力的な女の子という事くらいだ。

 無論性格について、物の好みについて。
多少はやはり知ってはいるけれど、そこから今回の企画に結びつけるのは少々難しい。

「プロデューサーさん?」

 ソファで悩むこと暫く。
不意に小鳥さんに声をかけられて我に返る。

「そろそろ貴音ちゃん来ますよ?」
「まじですか!?」

 慌てて時計を見て驚く。
今日の貴音は直行でレッスン場、後一時間程置いてラジオの収録といった感じなのだが。
気がつけばもうレッスン終了時刻を過ぎていた。

―――

 事務所に向かうタクシーの中。
わたくしは携帯の新着メールを開き、その画面をじっと見つめていました。
『ドッキリ企画の為プロデューサーを無視してくださいね。
 事務所に貴音ちゃんがついたスタートだからよろしく』

「どっきりとは……」

 確か、仕掛け人となって悪戯などをして人を驚かせる。
という物だった筈。わたくしがそれをするというのは、少し面白そうです。

「ふふっ、あなた様は一体どの様な反応をするのでしょうか……」

 事務所につき、そっと扉を音を立てぬように開けて。
少しだけ中の様子を窺うと、ぷろでゅーさーの姿をすぐに見つけました。
あの人はソファに座って腕を組み、考え事をしている様でした。

「……むぅ」

 いつもわたくし達の為に一人営業に回り、
レッスンに付き添い、撮影現場にも顔をだしてくださるあの人の姿を見て。
いまさらながら無視するという事を楽しみにしていた
わたくしが恥すべき人間の様に思えてきました。

 いまさらですが小鳥嬢に断りの連絡を入れようと携帯を開くとほぼ同時。

「そろそろ貴音ちゃん来ますよ?」

 と、小鳥嬢の声が聞こえました。

「あぁ、もうそんな時間ですか。
 はぁ~結局どうやって逆ドッキリするか思いつかなかったなぁ」

 名前を呼ばれたのと、覗き見をしている罰の悪さで
慌てて事務所に入ろうとした身体を止めて再び息を潜めるわたくし。

「逆どっきり……」

 わたくしの知識にあるものが正しければ、
それはどっきりを仕掛けてると思ってる側が実はかけられてる側という……。

「なるほど……、面妖な……」

 つまり小鳥嬢のメールは偽りで、
わたくしをどっきりにかけるのが本当の企画という事でしょう。

「ふふふ……」

―――

「おはようございます」

 時計を確認して数分後。
小鳥さんと談笑していた所に貴音が帰ってきた。

「おはよう貴音、レッスンの調子はどうだった?」

 挨拶をして入ってくるアイドル。
それに返す俺。ここまでは全員に共通する流れだ。

「……」

 そしてそれに返事をしてくれないのも、いつも通り。

「貴音?」

 こうしてどうしたんだ? とでも言うように呼びかけるのも慣れた物だ。
……嫌な慣れだけれどな。

「あら、お帰りなさい。この後の予定まで時間があるんでしょ?
 お茶でも飲む? いま入れてあげるわね」

 俺が悩んでいたのを知っている小鳥さん。
どうやら今回は積極的に関わってくるようだ。

「ありがとうございます小鳥嬢。是非」

 先ほどまでの無表情はどこへやら、
コロッと別人格にでもなったかのように柔和な笑顔になる貴音。
その辺は流石の実力か……。と、いかんいかん。

「……お~い貴音ってばー」

 少しだけ、声のトーンを下げて呼びかける。
イメージ的には自分を無視して小鳥さんと話してることに少しムッときてる感じで。

「小鳥嬢の入れてくださるお茶はとても好きです」
「あらそう? でも、雪歩ちゃん程じゃあないでしょ」
「いえ、ご謙遜なさらずとも」

 しかし貴音はまるで気にした様子もない。
まるで本当に無視されてる気分だ。

「はぁ……、おい貴音。お茶するのもいいがまだ仕事残ってるんだから
 打ち合わせしときたいんだが?」

 比較的若い、というか正直言って幼いアイドルが多い中、
特に大人びている貴音に対しての対応は少々悩む。
罪悪感もあるが少し強めに行った方が逆ドッキリらしいだろう。
そう思ってまた少し語尾を強める。

「おい貴音。いい加減なんとか言ったらどうなんだ?」

 何も言わないどころかこちらを向きもしない徹底した無視っぷりに、
こちらも演技に熱が入る。

「俺がなにかしたなら直接口にしたらどうだ?
 無私だなんて貴音らしくないんじゃないのか?」

 問い詰めるように言いながら貴音に詰め寄る。

「ふぅ……」

 すると貴音は落ち着いてお茶を一口飲み。
肩を竦めて俺の横をすり抜ける。
その動作に淀みも躊躇もなく、繰り返すようだがまるで本当に自分の意思でそうしてるような……。

「……小鳥さん」
「はい?」
「ドッキリのメール、ちゃんと貴音に届いてますよね?」

 そのまま事務所の反対側、カレンダーと今月の目標等が掛けられた壁と
睨めっこを始めた貴音に聞こえないように小鳥さんに小さく話しかける。

「それはもちろんですよ。じゃないと無視する理由がないじゃないですか……」

 いいながらも少し不安そうにする小鳥さん。
小鳥さんも俺と同じ感覚を覚えているようだ。

「ならいいんですけど……」

 調子が狂う。
いままでは皆それぞれ、アイドルらしい高い演技力を魅せてくれながらも
それでも身近な人間を無視するという事に誰しも覚える罪悪感に
多少のぎこちなさは否めなかったのだが。

「貴音!」

 そんな事を考えてもしょうがない。
貴音が思っていた以上に成長していた、そう考えよう。
俺はそう改めて思いなおし。
背を向けたままの貴音に再度近づき、その肩を掴んでこちらを向かせる。

「……」

 パシッ、と。
肩を掴んだ手を、軽く払われた。
それは、もう疑いようも無い拒絶の反応。

「……た、貴音」

 醒めた目でこちらを一瞥する貴音。
その瞳には今までに感じた事も無いような冷たい物が浮かんでいるように見えた。

「私に、話しかけないでください」

 そして瞳同様、冬の夜に広がる空気の様に冷たい言葉。

「な、なーんて! 実はドッキリでしたー!
 びっくりしましたかプロデューサーさん!」

 見詰め合うなんて表現は似合わない。
睨み付けられる、という一方的な表現が正しい。
そんな状況が幾許か続き、小鳥さんが慌てたように看板を持って横から近づいてくる。
それはこの状況を打破するナイスアプローチだと、ほっとしたのも束の間。

「どっきり? なんですかそれは」

 貴音の口からとんでもない言葉がでてきた。

「え、なにって……。ほら、さっき貴音ちゃんにメール送ったでしょう?」
「めーるですか。申し訳ありません、レッスンが思ったよりも押しまして、
 慌てて戻ってきたのでそういえば確認しておりませんでした」

「え?」「は?」

 小鳥さんと同時に変な声をだしてしまった。

「……あぁ、これですか。成る程……」

 おもむろに携帯を取り出し、メールを確認しているのだろう
ふむふむと幾度か頷く貴音。そしてパタンと携帯を閉じて、
先程までとなんら変わらない冷たい眼を俺に向けてこういった。

「残念ですが、これはどっきりでもなんでもありません。
 しばらくあな……、こほん。ぷろでゅーさーはわたくしに近づかないでもらえますか?
 予定は、そうですね。小鳥嬢にでも伝えて頂いて、めーるで教えていただければ結構です。
 では、そろそろスタジオに向かわなくてはならないので」

 動揺してるのか混乱してるのか、
とにかく俺と小鳥さんが口を挟む余裕も理由を聞く間もなく。
貴音はそういい残して足音高く事務所からでていってしまった。

「え、え、……お、俺貴音になにかしましたっけ小鳥さん!?」
「わ、わからないですよ! 昨日まで普通にお話もしてましたし、
 そんなこと一言も……。と、とにかく追いかけましょう!」

 扉が勢いよく閉まる音で我に返り、
顔を見合わせてそう言い合った後。
二人してひっくり返りそうになりながら、駆け出した。

「貴音ー!」「貴音ちゃーん!」

 それはもう後から思い出したら赤面必至の必至さだった。
あぁ、そうだったとも。まさかこんな展開になるとは誰が想像できようか。

「ふふっ……はい、呼びましたか?」

 本当に、……誰が想像できただろうか?
もんどりうって扉を開けたと同時、階段の途中で壁に寄りかかりながら
貴音が優雅にお茶を啜っているなんて。

―――

「結局、逆ドッキリにさらに逆ドッキリを仕掛けられたのか……俺達」
「ふふっ、わたくしを騙そうなどと企むからです」

 予想外に予想外が続き、
危うく事務所入り口の階段から転げ落ちそうになった俺と小鳥さん。
それを見て心底楽しそうに笑う貴音を見て、
俺達はようやく貴音に一杯食わされた事に気がついた。

「はぁ……、貴音の方が一枚上手だったか」
「みたいですねぇ……、なんだかドッと疲れちゃいました」

 ソファでぐったりする俺達に貴音は愉快そうに微笑みかける。

「……なぁ貴音」

 俺はそのいつも通りの笑顔にすら若干の恐怖を感じながら聞く。

「はい?」
「今日の、全部演技だよな? 本音とか、混じってたりしないよな?」

 すると貴音は。

「さて、どうでしょう?」

 今日一番の笑顔でそう言った。
そして俺は遅まきながら気がついた。やっていい相手と悪い相手がいるという事に。

                                         ―――貴音編 終われ



―――

 前記事同スレにて
 期待に沿えずすいませんでした
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Comment

なんか文が丁寧すぎて読みにくくなったような印象
いや、かなり面白かったんだけどね

No title

あそこに投下したうちの一人だけど
なかなかよかったと思うよ


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