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P「逆ドッキリ…ですか?」 小鳥「はい!」


 これで何度目になるかわからない逆ドッキリ企画。
今日のスケジュールを確認すると昼頃にやよいが一人で事務所に居る時間がある。

「という訳で今日はやよいちゃんですね」

 一緒に確認をしていた小鳥さんは演技をし、
直接騙すことになる俺の精神的負担など知らぬ存ぜぬと言わんばかりに
一人楽しそうにそう告げる。

「やよいか……」

 どうやら、今日の逆ドッキリはいつも以上に俺の胃が痛い事になりそうだと、
蝉の鳴き声をBGMに、ビデオカメラを構えて張り切る小鳥さんを眺めながら思った。


        ――― やよい編

「お、おはようございまーす!」

 いつも通りの元気な、しかしどこかぎこちない声が事務所に響く。
時計を見ると正午ちょっと手前。相変わらず真面目だ。

「おはようやよい」

 ぴこぴことトレードマークのツインテールを揺らしながら、
事務所に入ってくるやよいに声をかける。

「……」

 当然やよいはあらかじめ小鳥さんから嘘のドッキリについて
連絡を受けているので、わざとらしくぷいと顔を逸らして俺の挨拶を無視した。

 私、怒ってます。みたいな表情をして俺の挨拶を無視するやよいに、
場違いながら「あぁ、ずいぶん演技力があがったものだなぁ」などと言う
感想を覚えてしまう。そして同時に、普段の素直で元気なやよいに無視されるというのは
例えそれが演技だとわかっていても少々心に来るものがある。

「お~いやよい? 聞こえなかったか? おはよう」

 これからさらに心にも胃にも負担のかかる事をしなければならないと思うと気が重いが、
そんな心中はさておき、とりあえず俺は再度やよいに挨拶を試みる。

「ふーん……」

 顔を覗き込むようにやよいが逸らした方へ身体を移動させると、
やよいは小さくそういいながら反対側へ顔を逸らし何食わぬ顔で
パソコンを弄っている小鳥さんの方へ歩いていった。

―――

「やよい~?」

 困ったように呼ぶプロデューサーの声を無視しながら、
私は小鳥さんの机に向かいます。

「あの、小鳥さん」

 プロデューサーにばれない様に小さな声でお仕事をしている小鳥さんに話しかけると、
小鳥さんは「なぁに?」と笑顔でこっちに向きました。

「あ、あのー。プロデューサー困ってるみたいだし、
 もういいんじゃないかなーって」

 後ろのほうをチラッと見てみると、プロデューサーは私の方を見ながら
頭を掻いて苦笑いしていました。

「あら、ダメよやよいちゃん。ドッキリなんだから、少しやりすぎる位じゃないと」
「で、でもプロデューサーにも悪いですし……」

 小鳥さんは電話でもお仕事だからって言ってましたけど。
やっぱり、いつもお世話になってるプロデューサーを無視したり、
嘘をついたりするのは心苦しいです。

「そう? でも、プロデューサーだってドッキリってわかったら許してくれるわよ。
「う~……」

 結局、言い包められて小鳥さんに背中を押されてプロデューサーの所に戻されました。

「小鳥さんとなにを話してたんだ?」

 すると早速挨拶を無視したことを怒らないで、
いつもみたいに優しくプロデューサーが聞いてきました。

「……」

 つい本当の事を言ってしまいそうになるんですけど、
それをぐっと堪えてお返事をしないでだんまりして
また顔を逸らします。顔を逸らすのは、悲しそうなプロデューサーを見たくないから。

「……もしかしてやよい。怒ってるのか?」

 そんなことないです。って言いたかった。
感謝ならしても、私がプロデューサーを怒ることなんてありません。
って、そう口にしたかったけれど。
これはドッキリだから、プロデューサーならわかってくれるからって。
そう自分に言い聞かせて私は黙ってスケジュール表がかかってる壁に
逃げるように早足で向かいます。

「はぁ……」

 後ろから聞こえる溜息に、
つい、身体がビクッてなっちゃう。
悪い子だって思われたかもしれない、嫌な子って思われたかもしれない。
そう思うと怖くて、振り向いてすぐ全部伝えたかった。

 でも、振り向いて口を開いた瞬間に、
プロデューサーの背中の向こうで小鳥さんが大きく頭の上で
手をバッテンにしてるのを見て。また口をギュッて結ぶ。

「どうしたんだやよい? なんか嫌な事でもあったか?
 悩み事があるなら何でも聞くから、そんなに黙らないでくれよ。
 やよいは元気に笑ってる方が可愛いぞ」

 少し膝を曲げて、心配するようにプロデューサーが私をまっすぐ見つめてくる。
嫌な事なんかありません。プロデューサーが嫌な子と一緒に居るだけです。
だからそんな優しい事言わないでください。

 じわっと、目が潤んだのがわかって。
慌てて目を手の甲で擦る。こんな私を心配してくれて嬉しくて、
そんなプロデューサーを騙してて辛くて。
涙が勝手にじわじわと溢れそうになる。

「……やよい」

 声をかけられると同時に涙を見せた私を見て、
そしてそんなになっても何故かドッキリを続けなくちゃという変な感覚に従って
慌てて距離をとった私に、プロデューサーは凄く傷ついたような顔をしました。
今まで見たことの無い、表情。

「そうか、……わかった」

 目を伏せて、唇を噛んだプロデューサーはそういって。
悲しそうな笑顔を私に見せて。

「やよいがそこまで俺の事を嫌ってるとは思わなかった。
 いままで気づかなくて、すまなかったな……」

 小さくそう呟いて私に背中を見せて事務所からでていってしまいました。

「……っ! ち、違うんですプロデューサー!」

 慌ててずっと結んでいた口を開いた時には、もう、遅くて。
その背中にかけた言葉はバタンと閉まる扉の音にかき消されて。

「ま、待ってくださいプロデューサー!」

 その背を追いかけようとして、自分の足に躓いて転んだ。
床におでこをぶつけたけど、それもどうでもよかった。

「うっ……、ち、ちがうんです……」

 痛かった。おでこじゃなくて、心が。
私の所為でプロデューサーを傷つけてしまった。
謝らないといけないのに、追いかけないといけないのに。
プロデューサーに嫌われたと思うと、あの表情を思い出すと、
走るどころか立ち上がることもできない。

「あぁ……ひぐっ……ごめんなさい……」

 その一部始終を見ていた小鳥さんが、慌てて机から離れて駆け寄ってくる。

「大丈夫やよいちゃん!?」
「小鳥さん……」
「ご、ごめんね。まさかこんなことになるなんて……」

 だから私は嫌だって、言ったのに……。
そう思っても、後の祭り。プロデューサーはもうでていってしまった。
私が、もっと強く嫌って言っていれば、そう思うと涙が止まらなかった。

 どの位泣いてたのか、わからない。
ただ転んだままの体勢で背中を擦られながら泣いていて。
やがて、私が少し落ち着きを取り戻すと。

「ごめんなさいね。やよいちゃん」

 小鳥さんは、罰の悪そうな済まなそうな声でそう言った。

「……」

 けれど、それに返事する余裕は、やっぱり私にはまだ無くて。

「ホントに済まなかったなやよい」

 何度も何度も謝る小鳥さんを安心させようと、少しだけ顔を上げる。

「……え?」

 顔を上げて、しばらく時間が止まったかと思った。

「……悪かった。まさかここまでになるとは思ってなかったんだ」

 背中を擦ってくれていたのは小鳥さんではなく、
外に行ってしまったままだと思ってたプロデューサーで。
その顔にはさっきの表情はなく、代わりに申し訳なさそうにしていて。

「プ、プロデューサー……?」
「おう」

 どうして、とか。なんで、とか。いつの間に、とか。
そんなのは全部どうでもよくて、プロデューサーが戻ってきてくれたことが嬉しくて。
私は無意識にプロデューサーに抱きついていた。

「うおっ!?」
「プロデューサー! ごめんなさい! 全部嘘でドッキリで間違いで誤解なんです!」

 もうプロデューサーがどこにも行かないようにと、
強く強く腕を回しながら、滅茶苦茶に謝る私。

「あ、あのねやよいちゃん」

 小鳥さんに声をかけられて、プロデューサーに抱きついたまま振り向くと、
小鳥さんがドッキリの看板を持って苦笑いをしていた。

「そ、そうなんです! プロデューサーこれは全部ドッキリで!
 私はプロデューサーの事大好きで! だから、だから!」

 早口で捲し立てるように抱きついたまま色々言って。

「だから……だから……」

 泣きつかれたからか、来る前から緊張していた気疲れか。
プロデューサーの暖かい匂いの所為なのか。

「だから……」

 私はそこで意識を失ってしまって。

―――

「えぇぇぇぇっ!?」

 あのまま俺に抱きついたまま眠ってしまったやよいをソファに移し、
本当の仕事である午後のレッスンを急遽中止にして数時間後。
目が覚めたやよいは俺と小鳥さんに真実を聞いてとんでもない大声で驚いた。

「え、つまり、えとえと……」
「ドッキリをかけられていたのは俺じゃなくてやよいって事だ」
「ごめんなさいねやよいちゃん。私もプロデューサーさんも全部お芝居だったの」
「……えぇぇぇぇ」

 寝起きの頭の所為かどうかはわからないが、
全部説明されても未だに理解が追いつかないと言った様子で困惑するやよい。
流石に今回はやり過ぎたと強く反省する。俺と小鳥さん。

「そんな、だって、私すっごく怖くて!
 プロデューサーを、だって、……えぇぇぇ!」
「ほっんとうに済まなかったやよい!」

 事務所のアイドルでやよいは一番純粋で素直な子だ。
それをわかっていながら限度を弁えずあそこまで本気で泣かせてしまった。
しかもいい大人が、二人がかりで、面白半分で。
……最低な話である。それこそ本当に嫌われても仕方が無い。

「プロデューサー?」
「……ん、なんだやよい?」
「つまりプロデューサーは私を嫌いになってません……よね?」
「当たり前だろ! お前は大事な俺のアイドルだ!」

 やよいは、それを聞いて。また、一つ涙を零す。

「よかったぁ……」

 安堵したように、心から安心したように。

 そして、やよいは笑った。

「私も、プロデューサーの事大好きです。
 これからもこれまでも、絶対に嫌いになんかならないですから」

 そしてこう続けた。

「だから、もう二度とこういうことしないで欲しいかなーって」
「許してくれるのか」
「はいっ」




                           ―――やよい編 終わり―――



―――

 P「逆ドッキリ…ですか?」 小鳥「はい!」に投下したやよい編
 相変わらずアイマススレは紳士の社交場すなぁ……
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