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長門「……エヴァには私が乗るわ」  改訂版 第一話

 蝉時雨が俺の耳朶をドラムロールのように一つの音の連なりとして叩く
雲ひとつ無い晴天と呼ぶに相応しい常夏の空の下。
しかしそんなカラッとした外出日和であるのにも関わらず街はどういう訳か閑散としていて
都心の駅前という場所にも関わらず視界には人っ子一人見えやしない。

「……二駅も前でとまるとはついてないな」

 太陽が鋭い光を浴びせてくる俺はそれを遮るように手を翳しながら
俺は緊急停止してしまったリニアの駅を後に携帯を取り出して
以前送られてきた番号に記憶を頼りにかけて見るものの
聞こえてくるのは無機質な合成音で告げられる非常事態宣言の勧告メッセージ。

「電話も通じやしない……」

 溜息を吐きながら煌々と光る太陽によって滲む汗を拭って仕方なく歩き出す
考えてみれば電話など通じるはずが無い、
そもそも俺がこうして日の当たるところに居ることの方が異常なのだ。
この周辺の半径十数kmにも及ぶ地帯に住む人間は誰彼かまわず、一人残らず、
地下十数メートルにも達する位置に存在する分厚い金属で囲まれたシェルターの中に居なくてはならない。



「……しゃあない、歩くか」

 本来なら俺だって乗ってるリニアがとまった時点で如何なる用事や用件を破棄してでも
シェルターに避難して頭を抱えてるべきだったのだろうけれど……。
俺はポケットの中で若干皺くちゃになった業務用の茶封筒を
多少の躊躇と逡巡を交えてそっと取り出す。

『とっとと来い  byハルヒ』

 ずいぶん前に引っ越し、しばらく音沙汰なしになっていた自分の友人からの
あまりにも理不尽で、不条理な内容の手紙とも言えぬ何か。
俺はそれを照りつける太陽の下で眺めてから大いにため息を吐く。

 変わってない。
あの俺の意見を聞く気など皆無だと言わんばかりの言動、行動。
過去にも、それで色々な問題に巻き込まれた。
そして、きっと今も巻き込まれようとしているのだろう。
――けれど、そうはわかっていても数年振りの連絡に
郷愁が沸いたのか、それとも他の気まぐれなのか。
俺は一緒に入っていた見慣れぬカードと片道切符に背を押されるように
長期休暇を利用してここまで来てしまった。

「しっかし急がないと、待ち合わせの時間まであと1時間切ったか」

 俺の現在地は本来降りるはずだった第三新東京市駅の二駅前。
こうなるとこっちについてから昼食を食べるくらいの余裕を持って動いていたのが幸いか
全力疾走で最短距離を走ればそこまで待ち合わせに遅れることはないだろう。

「そうと決まれば、さっさと行きますか……」

 背負ったボストンバッグをそのままに
軽く屈伸をして目的の駅までここから走る体勢に入る。
この状況下でも、待ち合わせの相手側が居ないという可能性を
俺は全く持って考えていなかった。
何故なら待ち合わせの相手はあの涼宮ハルヒなのだから。

  『パシュッ』

 全力疾走第一歩目。
新設されたばかりの新都、その継ぎ接ぎの無いアスファルトを
使い古したスニーカーで踏みしめると同時に、
上記のような、まるで空気の漏れるような、
なにか薄っぺらい紙風船が破裂したような。

 そんな拍子抜けするような、情けない音がした。
そして俺がそのふざけた音を認識するとほぼ同時に
目の前を音の原因足る、でかい鉄の塊が音速を超えた速度で飛んでいった。

「ミ、ミサイルッ!?」

 音速を超えたミサイルが自分の頭上ギリギリを通り過ぎていく、
しかも発射音と思わしき音と同時に俺はそれを認識した。
つまり俺は呆気にとられ足を止めた不用意に無防備な状態で
遅れてやってきた轟音と風圧に身を晒す事となった。
まさしく耳を劈く様なと言う形容が当てはまる音が鼓膜を震わせ、
そして車にぶつかられたのではないかと言う勢いの空気の壁が俺の身体を
前方に大きく吹き飛ばしてくれる。

 ビリビリとその衝撃に商店街のシャッターが重奏の様に音を重ねて、
そのまま頭上を悠々と飛んでいったミサイルは周辺で一番でかい
デパートの裏手の方で爆発したらしく、
建物越しに巨大な紅い炎や、黒い煙や灰が舞ってるのが見える。

 俺は転がったまま頭を抱えていた体勢を解いて、
即座に立ち上がりミサイルが向かい爆発した現場へ走った。

「……なんだよ、あれ?」

 そこで目にしたのは化け物、
あるいは怪獣、もしくはモンスター、または巨人。
どんな形容も目の前のそいつの一片を掠っていて
しかし全然本質を貫いては居ないのだと自分でも確信できた。
異様で異形で異常で異端な――――『者』。
それがミサイルの雨のなか悠々と歩を進めている。

 そしてその周りには俺の上方を通り過ぎたのと同様のミサイルを
まるでシューティングゲームのように幾つも幾つも乱雑に吐き出す最新鋭の戦闘機が
十数……否。数十機と小蝿のように“それ”に群がっていた。

 頭も首も無く、やたらと細い足と腕を持つ“それ”
人間なら胸の辺りになるだろう場所にその大きすぎる体躯には
似合わぬ小さな仮面のような顔が存在しているのが離れたこの位置からでも見える。

 その巨大な化物の緩慢に動く身体に
最新鋭の戦闘機はミサイルを放ちぶつけ、機関銃を掃射していく。
周囲に粉塵と轟音をまいて爆発し、弾は全て巨体に吸い込まれていくが
しかし巨人に外傷があるようには見えない。

「意味、なさそうだな……」

 あまりにもあんまりな光景は一周して平静を呼んだのだろうか。
それとも一見ユーモラスな外見の巨人に現実味を失ったのか、
俺は本来なら大声で叫びながら即座に逃げ出しシェルターに逃げるところを
どういう訳かぴったりとそこで観戦を決め込んで独り言を呟いていた。

 ぼうっと非現実的な目の前の状況を眺めていると、
巨人に群がる戦闘機一つがその細くしなやかな手によって軽く叩き落される。
それはまるで蚊が飛んでいたのに気がついて追い払うような
非常に人間的な日常的な仕草で、しかしその小さな仕草一つで
億単位の値段で取引されるであろう高級な戦闘機が弾かれ吹き飛び火を上げる。

「おぉ……、っておいおいおいおいっ!?」

 巨人が邪魔に思ったのは群がる蝿だけではなく
見上げる蟻も同様だったのかどうか。
小規模な爆発を繰り返しながら急激に高度を下げた戦闘機は
そのまま真っ直ぐに立ち呆けていた俺の方へ落下し、
そしてそのまま逃亡する間もなく目の前と言って過言でない
至近距離にそれは墜落した。

 鼓膜が破けるかと思うほどの轟音、
そして目も眩む爆炎と閃光。
まるでスタングレネードが至近で破裂したかのような
耳鳴りと眩暈に尻餅をつきながら俺は自分の死を覚悟した。

 しかし強く目を瞑り無様に日光に焼けたアスファルトに座る俺に
やってくるのは日常では感じることの無い程の熱風と
細かな鉄片が額や頬を切り刻む痛みだけ。

「ん~、速く乗ったほうがいいと私的には思うのだけどどうだろう?」

 わんわんと続く耳鳴りが少しずつ収まると同時に
戻ってきた聴覚に届く誰かの声。

「乗る?乗らない?」

 強く閉じていた瞳を恐る恐る開くと、
光の残滓がちらちらと浮かぶ中
俺が倒れてる場所と、戦闘機が墜落し炎をあげる地点の
丁度真ん中辺りに真っ赤に塗装されたスタイリッシュなスポーツカーが一台、
運転席側のドアを開いて、停まっているのが確認できた。

 運転席に座る先程の声の主だろう、少し幼い感じを残す女性。
彼女はドアを開きながら巨人の方を
度々確認して困ったような笑みを浮かべていた。

「あの……、急いでくんね?」

 俺はそこでようやく封筒に簡素な文章の手紙と共に
小さくプリントされた顔写真の事を思い出し
転がるようにその車に乗り込んだ。

―――

「えぇと、私は泉こなたって言うんだけど……。知ってるよね?」
「まぁ、……一応」

 法定速度もなんのそのでグングン加速していく車。
俺はその助手席に身体を埋め、
ゆっくりと離れていく巨人をサイドミラーで確認しながら答える。

 泉こなた。
俺が待ち合わせをしていた、
本来ならあの場所から二駅先の駅前ビルで
普通に出会う筈だった涼宮が寄越した迎えの人物だ。
特徴的な青色をした、腰にも届く長い頭髪、
性別差を差し引いても尚余るほどに小さい体躯。
初めての場所で待ち合わせをするにはうってつけとも言える
非常に目立つ外見をした少女。

 ……いや、少女って言っても
車を運転している以上俺よりも年上なのは明白なのだが。

「泉さん。聞きたいことがあるんですけど」
「こなたでいいよ? 年も大して変わんないしさ。で、なにかな質問って」
「……いや、今まさに年に関して聞こうと思ってたんですけど」
「19だよん」

 二つ上、だった。
そりゃ、初心者マークついてなかったし順当な辺りだと思うけれど……。
というかこの状況で初心者マークとか言ってる俺は流石に図太いな。
――しかし、涼宮の代わりに待ち合わせに馳せ参じたって事は
関係者、……なんだろうな。
結局あいつはいま何をしてなんの為に俺を呼んだのだろうか。

「しっかし意外とマイペースだね? 聞きたいことは他にある筈だろうけど」

 含みを持たせるような物言いをしながら、
二つ上の少女は横目で俺を見る。
その長い髪と同じ、特徴的な青く、蒼い透き通った瞳で。
俺はそれに別段なんでもないように答える。

「いえ、整理できてないだけです」

 と。
大体あのような化物と最新科学の産物たる戦闘兵器の
街中での戦闘状態に一般人足る俺の脳がついていける筈が無い。
質問しようにも疑問があまりにも多すぎるのだから。
それに、下手に質問してまだ素性もわからぬ相手に
俺という一個人の情報を無闇に与えるのもよくはない。
今は黙っているのが得策だ、どうせ説明されても
一般人の俺には理解できないんだしな。

「ん?」

 探り探りではあるものの、
何事も無い会話をしてようやっと緊張が解けて弛緩する身体。
俺はシートと一体化するんじゃないかと言う勢いで
ぐったりとしたあと今一度離れていく巨人を確認しようと
サイドミラーに目を向けて、異変に気がついた。

「どうしたの?」

 現在時速150km超、昔の車ならキンコンと音がしてるスピード下で
俺が咄嗟に発した声に泉さんが反応して軽く俺の方に目をやる。
つまりは余所見、俺の方が空恐ろしくなるような姿勢。
大丈夫なのかよとそっとドア上部にある持ち手を強く握りながら
俺は泉さんにとりあえず声を漏らした理由の異変を説明する。

「あれだけいた戦闘機が、化物の周りから全部消えてるんですけど……?」

 弾薬を湯水のように化物の巨体に飛ばしまくっていた
数十機の戦闘機が今は見る影も無くその姿を消して、
巨人は悠々と一人で街中を闊歩している。

「えぇ!? うそでしょっ!?」

 余所見というレベルで済まされない身を乗り出して後ろを振り向くという行動を
俺の言葉で泉さんは時速150km超という車の運転席で行ってくれた。

 彼女は後頭部に頭がついてるのか、
確実に俺が今日二度目の死を覚悟した急激カーブを
後ろを覗き込んだまま華麗にドリフトを決めてスルーするという
ウルトラCを決めた後、そのまま中央分離帯を乗り越えて
近くの丘とも言えない僅かな地面の盛り上がりの裏に車を急速に移動させた。

「伏せて!」

 ドンと言う衝撃が来る寸前、
口の動きからそう言おうとしたのが理解できた。
が、理解できてもそこから更に行動に繋げられる程の猶予は無く、
彼女の助言も空しく俺はなんの準備もなく
今日幾度目かになる轟音も超えた爆音と共に転がる車の中で
洗濯機の中身のように華麗にシェイクされる事となった。

 上下が激しく入れ替わり、
視界が一転二転と幾度も回り続ける。
泉さんの「伏せて」になんらかのアクションを返す前に衝撃が来た為
舌を噛み切るような前だけはせずにすんだが
後頭部と額を交互に車内にぶつけながら俺は意識を危うく手放しそうになった。

―――

「大丈夫?」
「なんとか、一応、まがりなりに、奇跡的に、大丈夫です」
「結構やばい状態なのは理解できたよ」
「でも、意識はしっかりしてますんで、はい」
「……私はその方向には居ないよ」

 車が回転していた時間は多分十数秒に満たないだろうが、
その間に俺が額を何度強打したかはわからない。
ただ戦闘機墜落の際にできた切り傷とは別の
殴打による出血を額から確認できる程度にはぶつけた事は確かだった。

 その上、泉さんがこの事態にいち早く気づいて
少しでも受ける衝撃を弱めようと移動した場所は砂が異様に多く
空けていた窓から入った多量のそれらが口の中や服に入り
非常に気持ち悪さを加速させてくれた。

「とりあえず、車を起こそうか」
「……はい」

 身を守る道具ではなく、
むしろ拘束具として俺の身体を締め付けてくれる
シートベルトという存在をどうにか引き剥がしつつ
上下反対になって転がる車からどうにか這いずり出る俺と泉さん。

 外に出て砂だらけの服をはたきながら
ひっくり返った車に向き直り二人で同じ方向から
いっせーのと声を掛け合って押し、裏返った車を九十度ずつ元の状態に戻していく。

「あぁー……、私の愛車が……」

 四苦八苦して車の上下を正しい方向に持っていくと同時、
泉さんは痛切な声を上げて車の悲惨な姿に半泣き状態になって肩を落としていた。
それもそのはず先刻までの光り輝く様な新車さながらの塗装は見るも無残に
擦り傷だらけの凹み放題の酷い有様になっている。
これだけ高級そうなスポーツカーが一瞬にこの状態じゃ
確かに残念無念極まりないだろうと心中察するに余りある。

「あー! しゃあない!」

 のだが、泉さんは意外に早く感傷から持ち直し
べこべこになったドアを力ずくで開きながらキーをまわして
一気にボロ車になった紅い車のエンジンを入れる。

「なんか、立ち直り早いですね」
「いんやぁ流石にショックはショックだけどね……。
 でも君を連れてくる道中だし、修理費は経費で落としてやる」
「……そうですか」

 経費、ねぇ。
怪しい匂いがしてまいりましたってか?
その金はどこででてるんだ?
涼宮は一体なにをしてるんだ。
まさか会社経営でもして社長の椅子にでも座ってるんじゃないだろうな?

「よし、改めて行こうか」

 俺の心中を知ってか知らずか、
泉さんはなんとか生きていた車の運転席で
なんの憂いもないとばかりにハンドルを握る。
俺は先程とは打って変わって座り心地の悪くなった
助手席のシートに座って溜息を吐く。

 まぁいいさ涼宮。
お前がなにをしていても、
あの続きを一人で続けて居たんだとしても。
俺はなにも言いはしないよ。
それが、お前の願いだったんだから。

 一台も車の見えない道路。
そこを一瞬でオンボロになってしまった車だけが
ゆったりとしたスピード――別に安全運転思考になった訳ではなく、
一定以上のスピードになるとどこからともなく奇怪な音が聞こえてくるので
ゆっくりとしたスピードで移動しているだけなのだが――で走っている。

「さっきの爆発も、……あの巨人に対する攻撃だったんですか」

 俺はサイドミラーが根元からポッキリ折れてしまった為、
同様に砕けた窓から身を乗り出して
先程の爆発があったであろう方向を眺めながら言う。

「まぁ、そういう事になるのかな」

 爆発地点。
そこはまるで隕石が落ちたと言っても万人が信じるような、
とてつもなく大きなクレータができあがっていた。
ずいぶんと離れた位置に居る俺からでも、
その抉れた中心が見える程に巨大な、穴。
駅も、その周辺の建物も全て吹き飛ばしてできた、穴。

 その最も抉れた部分には、
先程戦闘機をあしらった巨人が屹然と立っていた。
腕が片方千切れ、人間ならケロイドになるだろう程に表面を溶かしてなお、
悠然と二本の足で爆心地に立つ巨人が。

「あれだけの爆発のど真ん中に居て、
 まだ形をあれだけ残して生きてるのかよ……」

 街を一つ飲み込むほどの兵器。
その存在にも驚愕したが、
国連の切り札であるその爆弾と言う言葉に当て嵌まらない程の
威力を誇る兵器ですら耐え切る巨人には、さらに驚愕を超えて困惑する。

 それは、本当に地球上に存在して良い“モノ”なのかと。

「……あれ一発で倒せたら良かったのに」

 窓から身体を引っ込めてシートに座りなおす俺に、
泉さんは本当に落胆したように呟く。
自分も巻き込まれかけたことに対する恨み節や、
怒りや、憤りなどは欠片も見せず。
ただただ肩を落とすように、呟く。

「まぁ、確かにあんな威力の兵器をバンバン使う訳にも行きませんからね」
 
 その悲痛とも沈痛とも言える面持ちに、
俺はなんとなく居た堪れなくなって軽いノリで返してみるものの。

「それも……確かにそうなんだけどね」

 泉さんは更に辛そうに、そしてどこか済まなそうに俺を見返すのだった。

―――

 それからしばらく会話もないままに車を走らせ、
本来の待ち合わせ場所である第三新東京市のカートレインに車を収めた。
いや、正確にはある程度どちらも言葉を発しはしたが
それは会話とは呼べない言葉の応酬に過ぎなかった。
ただただ、カートレインは沈黙のままにどうやら地下に向かって車を運ぶ。

「この先が、目的地ですか?」
「……そうだよ。ジオフロント、名前は聞いたことあるよね」
「それは、まぁあります」

 人間の手ではなく、自然のものでもない、
謎の地下に広がる球状の巨大空間。
ジオフロント。
コレが始めて発見された時は、大きく話題になったものだった。

 けど、ここが目的地?
そんな壮大な場所に涼宮が居るっていうのか?
……あいつは、一体どこまで先に進んでしまったのだろうか。
これは思ったよりも更に三回り以上やっかいになりそうだ。
俺は重く低い機械の蠢く音をBGMにそんな事を思う。

「あの、泉さん」
「こなたで良いって言ったんだけどなぁ、さっき。
 ……まぁ、そう素直にできるもんじゃないか。で、なにかな?」

 社交辞令だと思って居たのだが、
本気で苗字で呼んだ俺に眉を一回顰めた泉さん。
ふむ、珍しい本気でフレンドリーな人種のようだ。
……ちょっと苦手かも知れない。
まぁいい、今はそんなことはどうでもいいんだ。

「あの、泉さんは涼宮と一緒になにをしてるんですか?
 そして俺は一体なにをさせられるんですか?」
「ん~。ちょっと難しい質問だね、私は彼女と『一緒に』なにかをしてる訳じゃないよ?
 それに彼女が君になにをさせようとしてるのかも今は言えない」
「知らないではなく、言えないですか」
「そ、言えないの」

 言えない。
知っては居るけど言えないって事は
やはり涼宮の方が上位って事なのだろう。
それは予想していた、あいつが下になるはずが無い。
となると、やはりあいつが自身の手でなにかを行ってるという事か……。

「ん、そろそろ付くよ」

 一人思案に耽っていると、
不意に泉さんが独り言のように呟いた。
それに反応して俯いていた顔を上げると同時、
真っ暗で定期的に常夜灯が過ぎるだけだったカートレインの筒の背景は、
がらりと橙に染まる大きな空間の景色へと変わった。

 まるで地下とは思えない夕焼けのような色合いに染まる眼下。
いまだ発掘作業をしている重機に混じって少しだけ並ぶ
幾つかの人工的な建造物。
あの中のどれかに、涼宮が居るのか。

 吸い込まれるかのように美しい空間に、
しかし浸るほどの時間は無くすぐさまカートレインのレールに視界は暗く遮られ。
そして金属がぶつかり合い接続される音がして
高速エレベータに乗って下階に降りたときの様にかかり続けていた軽いGが消える。

「はい、ついたよ」

 泉さんはあっさりとそう言って、
車から降りてスタスタと歩いていってしまう。
俺もそれを追うように車を降りる。

 すると、さっきまで乗っていた車は
またレールに乗ってさらに下に流されていった。

「よし、これでオッケ。申請書類を後で提出すればきっちり直してもらえるっと」

 壁に取り付けられたコンソールを弄る泉さん、
俺はその後ろで流れていく車を眺めている。
あれ、修理するより買った方が安く付くんじゃないだろうか?
とか思いながら。

「じゃあ行こうか」

 車がはるか向こうに流されて姿が見えなくなってから、
泉さんはコンソールを更に弄って脇の分厚い扉をあけて言う。

「どこに、ですか?」


「SOS本部だよ。キョン君」

 開いた分厚い扉の向こうに続く廊下、
その壁にはSOSというアルファベット三文字と
イチョウの葉の様なエンブレムが描かれていた



―――

 まとめwikiの一話を改訂改稿加筆修正
 全部で三十三話プラスαって
 我ながらすげぇ物量だなぁ
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