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『追われる』 パターン2


 パン。と少量の火薬が爆ぜる音がグラウンドに響き、
それと同時に僕の耳にもそれが届く。

 地面に触れていた両手は素早く前後に振りかぶられ、
後方に投げ出されていた足はもう一方の足の踏み込みによって
強く前方に踏み出される。
一般的に、クラウチングスタートと呼ばれる
短距離での陸上競技で行われるスタート方法。

 前傾姿勢を保ちつつ、誰よりも早くトップスピードへ持って行き
そしてそれを百メートル、あるいは四百メートル間維持する。
呼吸を止め、全身の酸素を燃焼させて筋肉を稼動させる。
ほんの十数秒で決着が付き、
ほんのコンマ百分の一秒で勝敗を分ける陸上競技。

 僕は息を整えながらストップウォッチを
持ってタイムを計ってくれていた友人の元に向かう。

「10秒58、11秒02」

 僕を指差して第一声、そして。

「あー! もうっ!」

 僕と一緒に走った幼馴染を指差して、二言目を言った。
二分の一秒もないほんの少しの、けれど絶大な差。

「なんで勝てないの!?」

 幼馴染は全力疾走が終わった後だというのに
大声で叫びながら地団駄を踏みタイムを睨んでいる。
それに友人は苦笑を零し、
僕はかける言葉に困って後輩から受け取ったタオルで汗を拭く。

「もう一本!」
「嫌だよ、疲れたよ」

 僕等は男女の違いはあれど
同じように陸上部に所属していて
度々幼馴染は僕にこうして勝負を挑んでくるのだ。
毎回付き合って、毎度僕が勝ってしまう。
それはそうだ、幼少の頃はいざ知らず
一定の年齢を超えれば男女の差は大きくなる。
特に技術でのカバーに限界があるこういった競技では。

「そうだ。今ので何本目だ? いい加減にしとけ、明日はでかけるんだろ?」
「でも、追うのは悔しい」
「僕だって、追われるのは怖いよ」
「むかつく……」

 幼馴染の短い髪を後輩から受け取ったもう一本のタオルで
乱暴に拭いてやると幼馴染は頬を膨らませてから
僕の胸に額を強くぶつけて小さく呟いた。

「絶対に追い抜く」
「じゃあ僕はそれまで他の誰からも追われる立場になって置くよ」

 君は笑って、僕も笑った。
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