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『追われる』


 田舎だった。
人っ子一人居ない夜の田舎道、
街灯なんか立っていない畦道は
豊富な月明かりと星明りによって
辛うじて輪郭を保っている。

 私は、その道を一人走っている。
舗装もされてない小石が散らばるゴロゴロとした道を、
数メートル先も見えない中で
白く濁る呼吸を浅く繰り返しながら
全身の筋肉に溜まった乳酸が疲労を蔓延させながら。

 それでも止まるわけには行かなくて、
ただただ走り続ける。
縺れそうになる足、それを気力だけで持ち直して
目尻から零れる沢山の涙を拭う余裕もなく走る。

 私は、私は、私は。

 追われています。


 目が覚めたとき、
既に私は見慣れた自分の部屋ではない
真っ暗な山奥に一人寝転がっていた。

 私が住む都会の街や、
実家のあるどちらとも言えない町ではない。
明らかに辺境の土地、只管に田舎の村。

 バチバチ、と覚えてる最後の記憶を辿っていると
後方で甲高い何かが弾ける音が聞こえた。
スタンガンの、電気の爆ぜる音。
私がそれに振り向いたのと、
パンと言う軽い音がして私の肩が激痛に苛まれたのはほぼ同時だった。

 実銃ではない物の、
法や条例の改正により一般に販売されなくなった類の
威力の高いエアガン。
それは私の肩を貫きはしない物の、
恐怖という感情を植えつけるのには十分過ぎた。

 バチバチと爆ぜ続ける小型の無骨な機械を持ち、
そして私の肩を撃った何者かに私は心の底から恐怖し
その場から転がるように逃げ出した。
靴を履いてないことに気が付いたのは、その時になってからだ。
同時に服が異様に肌蹴、破け、乱れていた事にも
珍しく穿いていたスカートの下の着衣も、
羽織っていた上着もなくなっていたことにも。

 パン。と恐怖と困惑と動揺に彩られながら
山を下り走る私の後ろで、また音がして
足元の小石が音を立てて弾ける。

 それに追い立てられるように、
私は余計な事を考えずに走る。
足の裏が尖った石を踏んで血を流しても、
時折小さな弾が私の身体に飛んできても、
私が気を失っている間になにをされたのかという事に思考が行き着いても。

 ただただ走り、走り、逃げていた。
追いかける誰かは遊ぶように私を
ゆっくりとゆっくりと追跡しては時折銃を撃つ。
そんな、一方的過ぎる鬼ごっこ。
終焉が来たのは、当然それからすぐだった。

 パン。と幾度目かの小さな発砲音がして、
私の素足、ふくらはぎの辺りに直撃。
すでに疲労困憊だった私はそれを受けて
不様に砂利道を転げ周り身動き一つできなくなった。

 そして、ぜいぜいと息を繰り返す私の元に
段々と近づいてくる鬼。
手にしていた玩具の銃を放り捨て、
代わりに腰からサバイバルナイフの様な
肉厚の銀に光る刃を私に向ける。

 振りかぶられるその刃に、
抵抗する術は私にはもうなくて。
否、元より抵抗できないから逃げていた訳で、
捕まった以上、結果は目に見えているのだ。




「……ごめんなさい」
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