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忍「お前様にこれをやろう。……チョコじゃ」


 忍野忍という、一存在についてのあれこれ。
長い金髪。ドーナツが好き。ちっこい。
僕の従者。僕の影に住んでいる。
吸血鬼の絞り粕。その程度。
僕にとって最も近しい存在で、
僕にとって最も恐ろしい存在で、
そして僕にとって最も愛しい存在である所の彼女の事を、
しかし問われてみればあまり知ってるとは言い難い。

 更に本日この日。
所謂聖バレンタインデーと呼ばれる二月の十四日。
僕は今まで以上に忍の事がわからなくなる事態に遭遇した。


 親しい男女、乃至は女同士でカカオ豆を用いた
黒くて甘くて多量摂取すると鼻からの大量出血も危ぶまれる
そんな菓子をあげたり貰ったりする行事。
バレンタイン。

 正直に言わせて貰えば僕はこの日が嫌いだ。
一個も貰えないからではない、
確実に二つ、貰えてしまうからだ。
下の妹、阿良々木月火から一つ。
上の妹、阿良々木火憐から一つ。
計二つ。毎年毎年ご苦労にも妹達は僕に律儀にチョコを寄越す。
しかも市販ならまだしも見てわかる程度に手の込んだ手製のチョコを。

 兄としては妹のチョコを受け取らないという選択は無く、
また受け取った以上は礼を返さないという選択も無く。
毎年この時期の僕のお小遣いは妹達への返礼で丸々なくなってしまうのだ。
さらにさらに、今年はそれだけじゃない。
僕には今年彼女ができてしまっている。
それも戦場ヶ原という彼女だ。
以前の戦場ヶ原なら逆によかった、
僕に意地悪なのかなんなのかでキット反応に困るようなチョコを寄越しただろうから。

 でも、いまの戦場ヶ原はそうではない。
ちょっとした紆余曲折からガハラさんはツンドラ属性を捨てて
デレガハラさんにジョブチェンジしてしまったのだ。
そしてそのデレガハラさんは一月も前から今日の事を楽しみにしとくようにと
少し前なら考えられない柔和な笑みで言っていた。
つまりそれだけ手の込んだのを寄越すだろうことは目に見えている。

 愛すべき妹二人に愛すべき彼女からのチョコ。
これはもうちょっとやそっとの金額では済まなかろうと、
お年玉と一月から三月までの小遣い全てを
三月十四日の予算にすることを僕は決めたほどだ。

 しかし、それでも覚悟も見込みも甘かった。
二月の十四日。バレンタインデーという日を僕は侮っていたのだ。

 その先陣。
さきがけと言えるなにかを起こしたのが忍。
僕の従者であり、同時に僕の主人でもある金髪の少女だった。

 あとからして思えば気づくべきだったのだ、
その複線は、もうあからさまな程に張り巡らしてあった筈なのだ。
例えば一月後半入ってから忍が僕に内緒でやたらと月火や火憐と談合をしていたり、
僕が勉強している横で月火から奪ったのだろうバレンタインの雑誌をやたら読みふけっていたり、
無意味に全身からチョコの甘い匂いをさせていたり。

 ――本当、気づかない方がどうかしてるという程にあからさまだった。
けれど、それでも僕は本当にこの瞬間まで気づかなかったのだ。
鈍感、節穴。どうとでも言え。それは事実で真実で現実だ。

「お前様にこれをやろう」

 だって僕は、この状況に本気で驚いてる。

「……チョコじゃ。一応、手作りじゃぞ?」

 なぜなら僕は、この状況に本気で困惑してる。

 寝起きの頭というのもあるかもしれない。
突然の事態に単にまだ寝ぼけた頭がついていけてないのかも知れない。

「そう、じっとみられるのも恥ずかしい物があるのだがのう……」

 けれど、どんなに寝ぼけていたところで。
何度確認しなおしたところで。
ベッドに転がってる僕の横にちょこんと座って、
嘘みたいに照れ臭そうにはにかみながら僕に小さく甘い匂いのする箱を渡す忍の姿は消えない。

「あ、ありがとう……」

 恥ずかしそうに頬を掻いて目を泳がせる忍に、
僕はたっぷり時間を掛けてようやくその一言を言うのが精一杯だった。

 言って、同時に受け取る小さな包み。
忍の小さな手に握られた、小さなチョコレートの包み。
寝起きという場面上、当然これが今年初のチョコレートとなるのだが、
まさかそれが忍の物になるとはこの瞬間まで思いもしなかった。

「お前、料理とかできたんだ」
「伊達に幾百年と生きてはおらぬわ」
「……にしては絆創膏が目立つ手の平をしてるな」
「う、うるさいわい! そういうのは黙って見過ごさんか!」
「ははっ……。そっか、忍からチョコを貰えるとはな。
 お返しなにがいい?」
「……そんなものはお前様が自分で考えんか」
「ま、そりゃそうだ」

 話しながら起き上がる。
部屋はまだ暗く、閉めたままのカーテン越しの光は
今日が曇天であることをわかりやすく教えていた。
基本僕は寝るときは小さな電球などもつけない為、
部屋は非常に暗く、その中で忍の瞳と髪がやたら輝いて見えた。

「ふむ、用事も終わったし儂はもう寝るかの」
「ん? もうか?」
「これでも夜更かしじゃ、お前様の起きる時間に合わせて起きていたのじゃが」
「そっか、おやすみ忍」
「うむ」

 そう横柄に頷きながら大きく欠伸をして布団に潜り込んでくる忍。
一見すれば忍がそのまま僕の隣で寝ようとしているようだけれど、
実際は布団に隠れている僕の陰に入るために布団に潜っただけに過ぎない。
一応、念のための説明でした。

「しっかし……。チョコレートねぇ」

 布団にしばしできた小さな少女一人分の膨らみ。
それが音も無く消えて布団が元通り凹んで行く様子を眺めながら
僕は受け取ったばかりのチョコの箱を掲げてみた。
普通の、というには少々歪な包装。

 実際僕は貰ったことに驚いた位なのだから、
当然忍が調理している場面には遭遇していないのだが。
しかし何故だろうその包装を眺めていると、
ありありと忍の悪戦苦闘具合が浮かんでくる。

「……、つーかリボンかた結びってどうよ?」

 既に眠ってるのかどうなのかはわからない影の向こうの忍に
僕は苦笑いと微笑を均一に混ぜた笑みを浮かべつつ
そんな呟きのような質問を投げかけてみた。

 当然、絆創膏を巻く吸血鬼もどきからの返事はなかった。

―――

「はい、お兄ちゃん。バレンタインデーのチョコ」
「あたしからも受け取れ兄ちゃん! 手作りだぜ手作り!」

 以上、着替えてから部屋を出た僕に早々に飛んできた
最愛の妹二名からの第一声。

 例年よりも輪をかけて丁寧に作りこまれたチョコレート。
これを受け取った男子は100パーセント本命と受け取るであろうハート型だ。
お前ら渡す相手を間違えてると言ってやりたい、
なぜこれを兄に渡すんだ。
もっと適当でいいんだぞ? いや、本当に。
そうしたら僕も適当に返しても問題ないんだから。

「なに言ってんだよ兄ちゃん! もしかして照れてんのか~?」
「妹からチョコ貰った位で照れる訳ねーだろ。
 そんな兄は兄として失格だ」
「大丈夫! 例え世間から失格と認定されても
 あたし達の兄ちゃんは兄ちゃんだけだぜ!」
「喜んでいいのかわかんねぇよ……」

 まったく、参謀担当の月火はともかく
実戦担当とか言う肩書きを持ってる火憐まで
真面目にチョコ作りに取り込むんだもんなぁ。
キャラ違うだろと非常に突っ込んでやりたい。

 まぁ、それに付き合って同じように
渡す相手間違ってるだろ。と突っ込まれるようなお返ししてる僕も僕だが。
そこはそれ兄妹。結局ある程度は似てしまうって事で御勘弁を。
それに今年はキチンと別に彼女が居るのだから問題ない筈だ。――多分。

「で、お兄ちゃんは忍ちゃんからはもうチョコ貰ったの?」
「ん? なんでその事を――」

 ってそりゃ当たり前か、
こいつらのどっちかが忍に吹き込んだんだろうし。
どっちか、もしくは二人ともが手伝わなくちゃ忍一人で
チョコを作り上げるってのも無理な話だろうから、
知ってて当然なのか。

「んー。手伝ったのは手伝ったけど吹き込んではないよ?」
「あん? そりゃどういうことだ?」
「テレビで特集組んでたのを一緒に見たんだ、
 それで忍ちんの方から聞いてきて兄ちゃんに作ってやるって言い出したんだぜ」
「ふぅ、うん」

 つまりあくまで忍が自主的に作ったのかあのチョコ。
そりゃ、――まぁそこそこ嬉しい話ではあるな。
そっかそっか、へぇ……。

「兄ちゃん顔がにやけてるぞ?」
「お兄ちゃんってロリコンだったの?」
「違う!」
「そっか、兄ちゃんは私達二人のチョコよりも忍ちんのチョコ一つのほうが
 ずぅっと大事だったんだな……」
「いや、そんなことはないぞ!?」
「でもお兄ちゃんさー。まだ私達のチョコ受け取ってから一言も
 “ありがとう”とか“嬉しい”とか言ってくれないよね」
「そ、そうだったか?」

 そういえばそんな気もするけど、
毎年恒例である妹からのチョコに今更なにか言うのも気恥ずかしいし――。
というかさっきからこの会話、僕の部屋前の廊下でずっと行われてるのだが、
こんな会話を階下の両親はどんな気持ちで聞いてるのだろうか。
気になるが決して問いかけられない両親の内心。
ぶっちゃけかなりこえー。

 あと、こういったやり取りがほぼ毎年行われてるという事実を
戦場ヶ原に知られたらどうなるのだろうという懸念も浮かぶ。
それもそれでこえぇ。
前のガハラさんだったら確実にヤられてる自信がある。
――いや、そんな自信はいらない。捨てよう。

 などと妹二人の追求(というよりは詰問に近い何か)を
現実逃避気味に回避していると、不意に携帯が鳴る。
ズボンのポケットに突っ込まれた携帯を取り出しながら
妹二人を一旦黙らせて画面を見る。
表記された名前は『神原駿河』。
……これは罠か?

「あー、もしもし?」
『もしもし神原駿河だが、阿良々木先輩で間違いはないか?』

 ……罠じゃなかったか。

「あぁ間違いなく僕だが、しかしお前から電話をかけてくるなんて珍しいな」

 というか電話かけれたんだな神原。
相変わらず電話帳機能は覚えてなさそうな物言いだけれど、
それはそれで一つの進歩だと広く受け取らせてもらおう。

『おぉ、やっと阿良々木先輩にたどり着いたか。よかったよかった』

 ちょっと待て、いま不穏な言葉が飛び出た。

「あー、神原? 辿り着いたってのはどういう意味だ?」
『ほら今日は日曜日で学校が無いではないか。
 平日なら学校で直接言えたのだが休日では電話するしかアポイントメントをとる手段がないのだが、
 知っての通り私は機械が苦手でな。阿良々木先輩の番号に辿り着くまでに何度かけ間違いをしたことか……。いやぁ長かった』
「傍迷惑な奴だな!」

 電話帳が使えないのはわかってたから
精々着信履歴を使ったのだろうと思っていたが、
またずいぶんと前時代的というか、非常に涙ぐましい努力に出たな……。
というかそんなことする位なら直接来たほうがいいだろ、
いまさらアポイントメントなんかを取って見せたところで
僕がお前に気遣いというアビリティを見出すことはないから。

『いや、私も五十回程かけ間違いを繰り返したところで直接行った方がいいと思ったのだが』

 もっと早く気づけ。

『しかし自分の今の状態を考えると阿良々木先輩の家に着く前にしかるべき場所に連れて行かれそうだったのでな』
「……あー。もう大体落ち読めたけど一応聞くぞ? お前、今どんな状況にあるんだ?」
『もちろんバレンタインデーという事と私という事を踏まえて、
 全身チョコレートでコーティン――』

 ぶつっ、という音がした。
電話が切れたということだった。
というか僕が切った。ほぼ反射的に。
くそぅ神原め、期待を裏切らない奴だ。

「兄ちゃん誰からだったの?」

 電話の間律儀に黙って待っていた妹達だったが、
終わると同時に再開とばかりに再度詰め寄ってくる。
しかしどうしたものか、下の妹はともかく上の妹は神原の事を
同じ活動系のスターって事で変に尊敬してるきらいがあるからな……。
かといってここで嘘を吐いた所でそれはそれで下の妹に看破されるだろうし、
――仕方ない。

「お前も知ってるだろ? 後輩の神原だ」
「神原さん!? な、なんだって!?」

 異常なほどの食い付きだ。
見てみろ、わかってた僕はともかく月火ちゃんまで
お前の豹変具合に軽く引いてるじゃないか。

「う……。で、なんだって?」
「さぁな? よくわからんこと言ってるなぁと思ったら切れた」

 切ったのは僕だけど。

「なにお兄ちゃん、他にもチョコの当てがあるの?
 へー、今年は大量だね? いつからそんなモテ男になったの?」

 ……えっと?
なんでだろう、まるで浮気を恋人にバレた時のような気分だ。
した事無いのにそんな気分だ。
つーかなんで自宅で妹相手にそんな気分にされなくちゃいけないんだ、
これはなんの罰ゲームだ。僕が一体なにをしたよ?

「私に無断で彼女を作ってるし」
「なんでお前の許可を取らなくちゃいけないんだよ!?」
「あー、確かにそれは許せねーな」
「まさかの同調!?」
「最近お兄ちゃんちょっと調子に乗ってるよね?」
「ちょっと悪い感じの上級生からかけられる様な言葉を妹に投げかけられた!」

 えぇい、よくわからないけどとにかく僕が現状不利過ぎる。
どうにか不意をついてすたこらさっさと一度この場から逃げ

「逃げたら、刺すからね」

 ――るのは止めよう。
ちくしょう恨むぞ僕、なんで吸血鬼性をまだ残してるって素直に告白しちまったんだ。
月火ちゃんの猟奇性に磨きがかかって、且つ歯止めがかからなくなってる!
こんなことならさっき忍にチョコを貰ったときに血を吸ってもらうんだった。

「違うんだ月火ちゃん! えっと、月火ちゃんや火憐ちゃんになにも言わずに
 彼女を作ったのは悪かった! それに神原の事とかも、えーとえーと、とにかくごめん!」

 平謝りだった。低頭にも程がある。
というか本当僕はなにを謝ってるんだろうか。
謝るというか単に誤ってるだけの気がしてきた。

「まぁ……、いいけどね」
「マジでっ!?」

 妹に許してもらうことに本気で歓喜する兄がここに居た。
今度は火憐ちゃんが僕に引いてる。
引いたり引かれたり忙しい兄妹関係だなぁとか他人事のように思う僕。
傍から見たら一体どんな情景なんだろうか?

「というか、別に彼女作ったのは別にいいの。
 よくないけど、それはお兄ちゃんの勝手だし、仕方ない」
「うん。……うん?」
「でもさ、あんま私達をほったらかしにしないで欲しいかな」

 そういって、少し拗ねた様に口を尖らせる月火ちゃん。
なんだろう、普段からへそを曲げ易く天邪鬼な下の妹だけれど、
少し趣の違う、そんな珍しい拗ね方。
……あー。もう、まったく僕は本当にダメな兄だな。
妹の機敏に全然気づいてやれないんだから、愚兄と罵られてしかるべきか。

「……そういや、最近はめっきりお前達と遊んでないもんなぁ」
「まー、あたしは別にいいけどよー。
 兄ちゃんが忙しいのはわかるしさ」
「いや、やっぱり自分の事で一杯一杯になって
 お前達を構ってやれないようだしな」

 二人の頭を敢えてわざとらしくグリグリと
幼い子供にやるように乱暴に撫でくり回しながら話す。
こんな風に話すのもいつぶりだろうか、
普段なら即座に僕の手を弾くだろう月火も黙ってされるがままになっている。

「まったく可愛い妹だ。安心しろ、兄ちゃんはいつまで経っても
 僕が死ぬその瞬間まで兄ちゃんだ。いや、死んでも兄ちゃんだ」

 そんな感じでいい加減業を煮やした親が二階に上がってくるまで
べたべたと妹といちゃついてこの一連のというには無理がある無茶苦茶な流れは断ち切られた。

―――

『もしもし神原駿河だが。阿良々木先輩か?』

 なんとも居た堪れない朝食を乗り越え、
自室に戻って一息ついたところで再度神原から電話があった。
即座にかけ直さなかった辺り、またぞろ間違え電話をしまくったのだろうけれど
もはやそこは僕の関与する範囲ではないだろうと思い黙殺することにした。
というか全部のかけ間違いに上記のような口上を述べていたのだとしたら、
それはそれで問題だと思うのだけれど。
やはりそこもとりあえずは無視の方向で。

「あー、できれば違うと答えたいところだが残念なことに阿良々木先輩だ」
『そうか。それはよかった、所で阿良々木先輩さっきの話だが』
「……なんの話だったっけ?」
『阿良々木先輩がチョコ塗れの私を嘗め回してくれると約束した話だ』
「そんな約束はしてねぇ!」
『舌で嬲ってくれると約束した話だったか?』
「いやいやいや! そんな些細なニュアンスの違いを指摘した覚えもないぞ!
 もっと根本的にお前は間違ってる!」
『ふむ、ではどんな約束をしたのだったか?』
「そもそもなんの約束してないから、変な前提を作って話を進めるな神原。
 というかお前がチョココーティングされてるのも僕としては前提として認めてない」
『なにを言う! 阿良々木先輩は私を疑っているのか!?』
「疑ってるというか信じたくねぇんだよ! なんで僕が命令して
 それを神原が守ってるかどうかみたいな流れにしてんだ!?」
『え? だって命令しただろう?』
「してねぇよ!」

 ダメだ。話が進まないにも程が有る。
というか、仮に僕が神原チョコを受け取ったとしよう、
想像したくないし色々と間違ってる考えたくないイフだが、それでも受け取ったとしよう。
――僕は一体なにを返せばいいんだよ。
そんな手の込んで身体を張った物品に並ぶお返しなんて僕には浮かばないぞ。

『ふふっ、阿良々木先輩が受け取ってくれるという事が私にとってのお返しのような物だ』
「普通のチョコの時に言われたかった! 切実に!」
『そうか……。では』

 ブツッと、突然通話が切れる音がした。
今度は僕が切ったわけではない、
かといってあの神原が僕と話しているときに一方的に切ってくるとも思えない……。

「では、もう一度言わせて貰おう阿良々木先輩。
 このチョコを受け取ってくれ。お礼はいらない、受け取ってくれればそれがお返しだ」

 携帯電話片手に神原の意図を図りかねていると、
突如携帯電話越しではなく直接神原の声が背後から聞こえた。

「……やるじゃん」
「お褒めにあずかり光栄だ阿良々木先輩」

 勿論その姿はチョコレートコーティングされただけの全裸ではなく、
普段通りの少しボーイッシュな感じの可愛らしい女の子の私服。
そして差し出された一つの四角い箱。
中身がなんであるかは考えるだけ無駄だろう。

「いやはや、意外に苦労したものだ。
 溶かしたチョコに浸かってしまえば完成の全身チョコの方が楽だろうと本当に思った」
「いや神原。それをしたら火傷じゃ済まないんじゃないかと僕は思うぞ」
「ん? なにを言ってるんだ阿良々木先輩。湯煎で溶けるようにチョコの融点は結構低いのだぞ?
 でなければ口に入れても溶けまい」
「あー、そういやそうか。だからってやろうとする人間は少ないだろうがな、
 そもそも浸かるってどれだけのチョコが必要になるんだよ」
「最近の板チョコは量も減ってきているし、数万円は必要だろうな」
「……普通に高級チョコでも貰った方がまだ楽だ」
「なにを言っているのやら。乙女の気持ちが含まれたチョコは幾ら高級だろうと市販の物とは比べられんぞ」
「全身チョコは手作りと言っていいのか?」
「一応言っていいのではないか? 少なくとも市販はされてないだろう」
「当たり前だ! 年頃の娘がチョコ塗りたくられて市場にだされるって
 そりゃどこのブラックサイドだよ!? 普通に人身売買じゃん!」
「気持ちがこもって入れば大丈夫だ」
「邪念しかこもってなさそうだ!」
「人身売買から始まる恋もあるさ」
「あって欲しくないよそんな恋……」

 嘆息、神原との会話は面白いが疲れる。
こいつと会話を継続するには非常に体力が要る、
毎ターンダメージの代わりに威力が上がるRPGの装備品みてぇだ。

「というか、いつの間に本当来たんだ?
 お前が来たら妹達が騒ぎそうなもんだが、それじゃなくても知らせに着そうだし」
「うむ、下の妹さんと会うのは初めてだが上の妹さんとは知っての通り面識があるのでな。
 いま渡したチョコとは別にチョコを上げたら協力してくれた」
「……あー、安い妹だな。ファイヤーシスターズはチョコで動くのか」

 つうか先刻そのことでだだを捏ねてなかったか妹達よ。
僕が神原にどうとか、彼女がどうとか拗ねていたくせに
チョコ一つで売兄行為に走るとはいい度胸だ。

「で、入ったら最後神原フットを使えば気配を消すなど造作も無いのでな。
 通話をしながらぎりぎりまで近づいて、みたいな」
「みたいなってお前……」

 というかお前は僕と通話をしている間に妹達との交渉も行っていたのか、
お前がそんな多重能力者だったとはついぞ知らなかったぞ。
腹話術とかできんじゃねぇのか?

「神原マウスを使えば造作も無い」
「そうか、造作も無いのか。それは凄いな」

 突っ込み放棄。
僕の立場が危ぶまれる。

「そして神原アイで阿良々木先輩が部屋の扉に背を向けたのを確認して
 即座に部屋に忍び込み後ろを取って決め台詞を放ったのだ」
「そっかー、それは凄いなー」

 突っ込み放棄というか、これはもう相槌ですらねぇ。
丸と槍を投げっぱなし状態だ。

「あー、とりあえずありがとう神原。過程はどうあれチョコはありがたく受け取っておくよ」
「そうか、よかった」

 嘆息一つ。よくわからない流れを無理に切り上げて
本筋に話を戻させてもらったのだが。
神原はそれを気にした様子も無く、むしろ僕の台詞に
心底安堵したように息をつき微笑んだ。

「実を言うと男性にチョコを上げるというのは初めてでな、結構緊張していたのだ」
「へー、僕が始めてね。そりゃなんというか恐悦至極って所だが」
「そうなのだ、阿良々木先輩が始めての人なのだ」
「そういう言い方はやめてくれ神原、特に僕の部屋では。
 扉の向こうで確実に聞き耳を立ててる妹達に誤解を招きかねない」

 僕の発言とどうじに扉の向こうで小さく音がする。
わかりやすい妹達め。

「というか、それ以前に僕は『男性にチョコを上げるというのは初めて』という節に待ったをかけたい」
「うむ、流石阿良々木先輩。気づいてしまったか」
「お前のキャラを考えれば当然目に付く」

 付かない方がおかしい。
全身チョコーティングだって過去にやってそうだしなこいつ。

「いや、やったことはない」
「そうか、安心したぞ神原」
「だがやられたことはある」
「安心できねぇぞ!?」
「そうあれは一昨年のバレンタイン、中学卒業を目の前にした最後のバレンタインだった」
「回想入っちゃった!」
「仲の良い後輩の家に呼ばれて遊びに行った私は驚愕した。
 玄関を開けるなり強く匂うチョコレートの匂いに」
「全身に塗るだけのチョコを溶かせばそうなるよな……」
「即座に換気した」

 ……いや、間違ってないけど。
でも間違ってる。


 放棄したはずの突込みを拾うべきか否か悩んでいる間に
神原の回想話は勝手に進んでいく。
ノベルゲームのオートボタンを知らず知らずに僕は押してしまったらしい、
戻すにはどうすればいいんだろうか? とりあえず殴ってみるか?
斜め四十五度で勢いよく。

「で、窓を開け放ったあと。
 私を呼んだはずの後輩の姿が見えないことに気が付いた」
「その子の両親とかは?」
「留守だった。誘われたときの言葉が『今日家、私だけなんです』だったからな」

 それはそれは。
ある意味常套句だけど使う相手とか使い道とか間違ってる。
さっきから間違いだらけだこの回想。
いつになったら終わるのだろうか、
気づけば妹達の気配は復活してるし。

「で、私は部屋の真ん中で愛を叫んだんだ」
「迷惑極まりない!」
「間違えた、後輩の名を叫んだんだ」
「どっちにしろ迷惑だ!」
「するとどこからか後輩の声が聞こえ、私はその声のする方に向かったのだ」

 落ちが見えてきた。
やな落ちが見えてきた。


「それは、まぁ想像通り風呂場でな。
 チョコの匂いも充満しすぎてよくわからないことになっていた」
「だろうな」
「で、私が何度か確認してから意を決して風呂場の扉を開くと、
 そこにはバスタブ一杯のチョコに沈む後輩の姿が。
 当然私は驚いた、見慣れた後輩の顔が黒い塊からひょっこりでているのだからな」
「どんな怪談だ……」
「いやぁ、あの光景はきっといつまでも忘れないだろう。
 それほどまでに強烈だった」
「というかそれ以上に強烈な情景に僕は今後出会いそうにないぞ」

 怪異とかの非日常な物関係だと、逆になんでもありだから。
むしろそういった日常の中での起こりかねない異常の方がインパクトがある。
でかいチョコの塊から顔って、黒いぬりかべじゃん。

「で、後輩は私の顔を見るなりこういった。『助けてください』と」
「はぁっ!?」

 そこでその台詞!?
その場面なら精々『私を食べて』とか『私を貰ってください』とか
いってもその程度だろう。なんでいきなり命乞いしてんだよ!?
 

「ほら言っただろう? チョコの融点は低いのだ、
 つまりそれは冷めてまた固まるまで温度差が小さいということでもある。
 特に二月という季節はそこらに放置してもチョコが自然に溶けるという事はない程度に寒い」
「あー、つまり。火傷しない程度に溶かしてから冷めたチョコに浸かって
 お前の到着を待っていたらその間にチョコが冷めて固まったって事か?」
「そういうことだ」
「……」

 くっだらねぇ!
すっげぇチョコの無駄じゃん!
しかも後処理が非常に大変そうだし、
金もかなりかかってそれじゃあかなり辛い物がある。

「いや実際大変だったのだぞ? ただでさえ分厚くしっかり固まったチョコは
 レンガになるほど硬くて頑丈なのだというのに、まるまる風呂桶一つ分が一つの塊になってるのだ、
 もう殴っても蹴ってもビクともしない堅牢な黒い物体と言って過言ではない」
「もう聞きたくないが、どうやって掘り出したんだよ?」
「他の後輩とかに手伝ってもらってもよかったのだが、
 流石に他の友人に見られたくないということでな。
 私一人でシャベルなどを使って一日がかりの作業になった。
 幸い腹が減ったら目の前にあるチョコを食えばよかったしな」

 それは幸いなんだろうか、
チョコの匂いの充満する部屋の中で
大量のチョコと格闘しながらチョコを貪る。
一種の拷問だ。僕の精神なら二時間で砕けるだろうことは目に見えてる。

「まぁ、そんな話だった」
「ん?」
「どうかしたか?」
「どうかしたもなにも、――落ちは?」
「ない。もちろん山場も話した意味もないぞ? 私はやおい好きだからな」
「この野朗上手い事言いやがって!」
「人生そんなものだ阿良々木先輩」
「まさかの諭され!」

 どうしろって言うんだよこのぐだぐだな空気。

「って、もうこんな時間か!?」
「む、ありがちな切り上げ方だな。どうかと思うぞ」
「いやちがくて! 昼から戦場ヶ原と約束してんだよ!」
「あぁ、そういえば昨日そんなことを言ってたな」
「言ってたの!?」
「夜中に電話がかかってきて三時間くらい惚気られた」
「僕の身の回りの奴は他人に迷惑をかけることに関してのスキルが高すぎる!」

 しかし参った。
気が付けばもう正午過ぎてるじゃんかよ、
別に特に仕度しなくてはならないものはないから間に合いはするだろうけど。
あー、戦場ヶ原よりも早く待ち合わせ場所に行こうと思ってたのに。

「そうか、戦場ヶ原先輩との逢引か……。
 確かにそれを邪魔してしまう訳にはいかないな」

 非常に残念そうに腕を組み
慌しく部屋を回る僕を眺めている神原。
――なんというか、本当に可愛い奴だなこいつも。

「悪いな神原。わざわざ来てもらったのにさ」
「いや、阿良々木先輩が気にすることはない……」

 あからさまにしょんぼりしやがって、
抱きしめてやろうか、この後輩め。

「ってぇ!?」
「ど、どうした阿良々木先輩!?」
「足が……」
「足!? 足を舐めろと言う事か!?」
「全然違う!」

 なんでこの状況でいきなり足を舐めさせようとしてんだよ阿良々木さんは。
とんだエス野朗だ。

「ではどういうことだ? あぁ、私を踏ん付けてやるという意思表示か?」
「何でお前はそういう方向にしか思考がいかないんだよ!?」

 言いながら僕は一旦その場にしゃがみ込み、
少々不純な思考をしたと同時に痛んだ自分の右足首をズボンを巻くって覗いてみる。

「うっわぁ……」

 アキレス腱の辺り、内側と外側にできた二つの弧。
僕の足首には忍の見事な歯型ができていた。

「いってぇ訳だよ……、がっつり噛みやがって」
「一体なにがどうしたのだ阿良々木先輩」
「あー、なんつうか……」

 最近は血を飲ませてない為、
いつも以上に時間を掛けてじわじわと治っていく歯型を眺めながら
僕は苦笑いと共に呟く。

「ほんっとう、可愛い奴ばっかだな。僕の周りは」


―――

「どうしたの? 凄い汗かいてるわ、はいこれ使って。
 え? ううん待ってないわ、私も今来たところだから、
 ……それより、この服どうかしら? 新調したばかりの服なんだけど。
 本当? ありがとう阿良々木君、凄く嬉しいわ」

 以上の台詞を戦場ヶ原ひたぎという人物が言ったとして、
一体幾人の人間が信用し、素直に飲み込むことができるだろうか。
いや、台詞だけならまだわかる、口調自体にそこまでの変化は無いし、
もしかしたら過去の戦場ヶ原も僕に対する嫌がらせ目的で無表情に
この様な発言をするという可能性もあったかもしれない。

 けれど、目の前の戦場ヶ原ひたぎは違う。
なにが違うってもうなにもかもが違う。
その柔らかな物腰、柔和で温和な微笑み、
遅れて走ってきた僕に恨み言の一つも凶器の片鱗も向けずに
花柄のハンカチを渡してくれ、弁解する姿にクスクスと笑う動作。
そして以前より少し露出が多くなった女の子らしい服装。
この戦場ヶ原がドッペルゲンガーである可能性を疑っても、
なんら仕方がない事だろうと僕はしみじみ思う。

 デレガハラさん。
彼女は本当に普通の女の子になった。
つまらなくなったなんて言葉も言われた彼女だけれど、
それでも僕は言い続ける。これは進歩で、喜ぶべきところだと。

 存在が、儚げ。
いつだったか羽川が戦場ヶ原の事を評した言葉の一つだ。
それは多分、戦場ヶ原の全容に近い一端だった。

「じゃあ、阿良々木君。早速だけどこれ、もらってくれる?」

 消えてなくなりそうで、誰とも介さず、誰とも交じらず、
故に儚く散り散りと割れそうな印象が心に根付く。
届かぬものを求め、自身に無いものに憧れる様に、
その姿はやがて深窓の令嬢となった。

「バレンタインのチョコレート。
 阿良々木君の為に頑張って作ったんだから」

 いまの戦場ヶ原はもう深窓の令嬢ではない。
明朗快活、中学時代に戻ったかのような彼女に
クラスの連中も戸惑いを隠せないようであったが、
しかし人当たりが柔らかくなり、人付き合いが良くなった戦場ヶ原は
いままでのブランクを見る見るうちに埋めるようにクラスに馴染んでいった。

 正直に言えば、多少の嫉妬というか
少々寂しいようなそういった感情を抱かなかった訳ではないが。
それよりも、戦場ヶ原自身が現状を楽しそうに受け止めているという事実が、
僕はひたすらに嬉しかった。

「阿良々木君?」

 伺うような、心配するような表情で僕の顔を覗き込んでくる戦場ヶ原。
唐突に接近した彼女の顔に僕は思考の海から引き釣り上げられ狼狽する。
なんていうか、本当女の子の睫毛って長いよな、
それに最近するようになった薄い化粧がまた艶っぽいというか。

「い、いやごめん。ありがとう戦場ヶ原、めちゃくちゃ嬉しい」
「よかった喜んでもらえて。本当は期待しててとか言ってたけど
 こういうの慣れてないから凄く緊張してたのよ?」

 そう言ってまた照れたように笑う戦場ヶ原。
――なんか、ここ一年の僕ってなんだかんだ言って恵まれてるよなぁ。
すっげぇいまそれを実感した。
もらえるだろうと思っていても実のところ結構僕も緊張していたし、
こうして本当にチョコを受け取るとやっぱり非常に嬉しいし喜ばしい。

「じゃあ行きましょう阿良々木君」
「うおっ、ちょ、戦場ヶ原」
「なにかしら? 恋人なんだから腕を組むくらいしてもいいじゃない」
「いや、急にやられたら驚くし……」
「それとも、……いやだった?」
「全然嫌じゃありません!」

 そんな感じで、毒舌の無くした戦場ヶ原と
突っ込みという存在理由を捨てた僕のデートは本当に恙無く進行した。
ここから先の内容は面白要素が皆無な上に
デレガハラさんの本領発揮デレドロ状態が酷いために僕はプライバシーという
安易且つ万能な言葉を引き合いに出して詳細に語ることはしないので了承願いたい。


―――

 午後六時。
夏場ならまだしも二月中旬という季節でのこの時間は
もう夕焼けも遠に過ぎさってしまった夜そのもの。
僕は徒歩で一人街灯に照らされた暗い道を歩いている。
戦場ヶ原を家に送ってからの帰路だ。

 本当はもう少し同じ時間を過ごしたかったのだが。
僕と戦場ヶ原は健全な高校生カップル、
しかも受験生であるからして、夜更かし夜遊びというのは避けなくてはならない。
一時的な感情で遊び呆けて今後を台無しにする訳にはいかないし、
羽川にもしそれが知られたら僕は一体どうなってしまう事か。

「……想像したくねぇな」

 そういえば、今の戦場ヶ原は武器、というか凶器を持っていない。
何度もこうやって現在と過去を比較させるのは
当人にとっても失礼なんだろうとわかってはいるのだけど、
でも以前の癖以上の病気に程近い迄に浸透していた
文房具装備を今は完全に手放している。
一緒に勉強してるときに僕が意地悪な事を言っても、
手に持っているシャーペンを僕の眼球に突きたてたりしなくなった。
僕が戦場ヶ原を家に送った理由の一つがここにあったりする、
勿論理由の大半は少しでも一緒に居たいからだが。

 ――と、そういえば先程引き合いに出した羽川だが、
あいつは本日この日のバレンタインというイベントの事を
今日まで一度も会話に織り交ぜるという事をしていなかったな。

 クラスの連中は一部を除いて大抵が進路も決まり、
プレッシャーもなくなった所に現れたイベントにやたらに騒いでいたのだが
(この場合僕は一部に含まれたりする。近々後期の試験がある)。
羽川はそういった話題にまったく触れたりはしなかった、
というか意図的に避けていたようにも思える。

 まぁイベントの趣旨が趣旨だし、
僕と羽川のそういった方向の微妙な立ち位置を考えると
少し寂しいながらも当然といえば当然だろうか。
というか、本当僕達の立場って結構不安定だよなぁ……。
ドロドロはしてないまでも、
しかしぬかるんだ感じが微妙に漂っている気がする。
その辺も、当事者の僕としてはあまり口にし難いけれど。


「いや、やめだやめ」

 頭を振って思考を飛ばす。
あんまりこういった事を考えるのはよそう、
妹達に忍、神原に戦場ヶ原と計五つも貰っといて
さらに羽川からも貰おうだなんて我侭欲張りを通り越して強欲傲慢だ。

 それよりも早いとこ帰らないと、
実際がどうあれ僕の帰りが遅くなると
僕の家族に変な誤解を生みかねない。
両親からはまだある程度放任されてるから良いけれど、
妹達に変な誤解を生むとまたやっかいだからな。
口外されたりしたら困る、あいつら変に人気者だから。


「おや、柊さん」

 徒然とした思考をしながら漫然とそぞろ歩いていると、
僕が歩いている道の脇にある細い横道に見知った小学生を見つけた。
見つけた、といっても先に見つかったのは僕のほうだが。

「実際に存在している苗字の上、響きまで似てるからうっかり聞き逃しそうになるが
 残念ながら僕の名前はモクセイ科モクセイ属の常緑樹ではなくて阿良々木だ八九寺」
「失礼噛みました」
「違う、わざとだ……」
「しちゅれい、かみまみた」
「本気で噛んでる!?」
「ひょうひれははららひはんははんでほんなほほろを?」
「なにがなんだかわからない!」
「はひふへほ!」
「バイキンマン!?」

 まぁ、小学生と言った時点でもうわかってるだろうけれど。
察しの通りというか、期待通りというか、
僕等の愛玩小学生八九寺の登場だった。

「おっほん。で、どうして阿良々木さんはこんなところを?」

 相変わらずのツインテールと大きなリュック姿で
初っ端からかっ飛ばしてくれた八九寺大先生はお約束が終わると同時に
咳払いを一つしてそんな問いかけをしてきた。

「あぁ、よかった。あのままのノリで続けるのかと僕は戦々恐々だったよ」
「阿良々木さんがお望みならそれでもいいですけど」
「いや、まったく望まないし続けられたら会話が成立しないぞ」
「私は一向に構いません!」
「そこでそのネタかよ!?」

 中々に濃い小学生だ。

「っと、そんなことはいいですから質問に答えてくださいよあさり木さん」
「僕を味噌汁とかに入ってる食用の貝みたいに呼ぶな、僕は阿良々木だ……、
 って短いスパンに二度お約束持ってくるなよ、一発屋の芸人みたいじゃないか」
「失礼、仮眠しました」
「寝るなよ! いや、むしろ夜にしっかり寝ろよ!」
「夜は夜で寝てます!」
「単にのび太君属性!?」

「って、そんなことはいいですから質問に答えてくださいよ。二回目」
「ネタを振っておいてその言い草かよ……。
 まぁどうしてと言われても家に帰る途中ってだけだしな」
「帰る途中……、あぁツンデレさんのお家からのですか」
「……」

 いや、そうだけど。
確かにそうだけどなんでそんなにすぐにわかるんだよ、
エスパーか、テレパス能力者なのか?

「もし、本当にそうだとしたらどうします?」
「そうだなぁ、――八九寺に色々な事をする想像をひたすらに巡らすかな」
「うわぁ……」

 超引かれた。
シーエイチオー矢印引かれた。
CHO→、見たいな。……痛いな。

「しかしそうですか、今日確かにバレンタインですしね。
 アレですか? デレたツンデレさんに私を食べてとかやらせたんですか?」
「お前は僕をなんだと思ってるんだ」

 そしてそのネタは神原と既に済ませた。
ネタ被りだ愚か者め。



「神原さんと済ませた?」
「あぁ、今日の昼前に家でな」
「え……、つまり神原さんが阿良々木さんに私を食べて、と? なにをやらせてるんですかあなたは」
「はぁっ!? なんでそうなるんだよ!? 神原はやられた側だ!」
「やられた側、つまり阿良々木さんが神原さんに僕を食べて、と? なにをやってるんですかあなたは」
「違うっつってんだろ! 神原が、中学生の頃、後輩にやられた、って言う話を昼前にしただけだ!」
「なんだ、そういうことだったんですかつまんない」

 つまらないってお前、
仮に僕がそんな傍目にも明らかにヤバイ行為をしてたらどうするんだよ。

「そしたらとりあえず肺に穴でもあけて差し上げましょう」
「それすっごい苦しい死に方じゃん!」
「でも、さっき私やりそうになりましたよ」
「とんでもねぇことをあっさり告白してんな!」
「というか阿良々木さん、バレンタインデーに彼女とデートがあるというのに
 自宅に別の女性を招いていたんですか? 最低ですね」
「うぐっ、急に現実的な批判を……」

 というか僕招いてないし、
勝手にやってきて勝手にあがってきただけだぞ。

「自分を慕ってやってきた後輩に対してそんな物言いとは、最低ですね」
「とにかくお前は僕を最低にしたいらしいな!」
「はい」
「素直!」

 つーか八九寺、僕を最低に仕立て上げて
お前に一体どんな得があるというんだ。
毒舌キャラ枠が空いたからって引き継ぐ必要性なんてないんだぞ?
そのままの八九寺で居てくれ。

「はぁ……。つまり阿良々木さんは私にいつまでも幼女で居てくれと言うんですね?」
「そうは言ってない」
「いつまでも愛玩小学生で居てくれと言うんですね?」
「だから言ってない! お前はさっきからつまりつまりととんでもない事ばかり言いやがって!」

 あと、地味に最初の僕のモノローグを持ってくるんじゃねぇよ。
しかし改めて聞くと愛玩小学生という言葉もとんでもねえよな。

「改めるまでも無くとんでもないですよ。
 なんですか愛玩小学生って、無茶苦茶な語感ですよ。
 警察が近くに居たら確実に小走りで寄ってきますからねこの言葉」
「正直反省してる」
「一笑しててください」
「え? 笑い飛ばせと?」
「間違えました、一生しててください」
「そんな文字でしかわからない間違いを……」

「あー、しかし阿良々木さん」
「ん? どうした八九寺ちゃん」
「……うえっ」
「うえっとか言うなよ! 傷つくだろ!」
「どうせすぐ治るじゃないですか」
「心の傷は簡単には治らないんだよ!」
「はぁ、またそんな乙女みたいなことを言って。
 阿良々木さんは一体どの層の人気を狙ってるんですか?
 もっと私らしくわかりやすい層にアピールしてくださいよ面倒臭い」
「お前のキャラってアピールだったの!?」
「はい、阿良々木さんみたいなロリコンに焦点を絞ったアピールです」
「もっと自分を大事にしてと声を大にして言いたい!」
「最も私を蹂躙してるあなたがその台詞を言いますか!」
「怒られた!」

 その前に蹂躙って、……もっと言葉を選べよ小学生。
微妙に生々しい。あと僕は何度も言うようにロリコンじゃない。

「あぁ、ペドフィリアですか」
「悪化した! 本当そういう方向マジやめて!
 それこそどの層の人気も得られなくなってしまう!」
「いいじゃないですか、どうせハーレム漫画の主人公なんてどいつもこいつも人気ありませんから」
「ぶっちゃけた!」

 というかはっちゃけてる。
なんだこのテンションは、落ち着け僕、
ここは天下往来の一般道だ。

「おほん」

 わざとらしく咳払いをしてみた。
仕切りなおしという合図としてはありきたりだが仕方ない、
拍手を打つよりはまだ腰を折らないだろう。

「で、なんだっけ。なにか聞きたいんじゃなかったのか?」
「はい、今日はお幾つチョコを頂いたのかを聞こうと思ってました」
「数? えぇっと……」

 妹達と神原と戦場ヶ原、そして忍からだから。

「五つ、かな」
「はぁ~、随分偉くなったものですね阿良々木さんも」
「まぁ五つって言っても内二つは妹からだしな、ノーカンだろそれは」
「そうですか?」
「そりゃそうだろ」
「私からしてみれば妹さんたちも十分頬染め状態ですけどね」
「……ん?」

 頬染め状態?
なんだそれは、常に頬紅を塗りたくってるのか?
お歯黒みたいな……いや、流石にそれはないか。
常識的に考えれば妹達がそんな状態になってるのを見たことは無い、
というかそんな妹は妹じゃない、赤の他人だ。

「おや阿良々木さん、もしかしてときメモをご存じないんですか?」
「ときメモなら知ってるけど……」

 ときめきメモリアル。
1994年にコナミからPCエンジンSUPER向けに発売された恋愛シミュレーションゲーム。
その人気の高さからプレステやゲームボーイ等々に移植され
今でも新シリーズを最新ハードでリリースしてる超有名タイトル、
ドラマCDやOVAにもなっている程でやったことのない僕でも
その大まかな内容というかストーリーのような物は知っているが……。

「流石は阿良々木さんですね」
「こんなことで流石とか言われたくねえ……」
「まぁそのときめきメモリアルなんですが、
 ご存知恋愛シミュレーションでして、ヒロインの好感度という物が存在しまして、
 それが最高に達すると常時頬を紅く染めて主人公に話しかけてくるんですよ」
「妹がそんな状態だったら僕は間違いなく熱を測った後で病院に連れて行っているぞ」
「例え話ですから」
「つか妹ってのは基本的にそういうゲームじゃ攻略対象外だろ、倫理的に」
「阿良々木さんはどうやらときメモは知っていてもシスプリはご存知無いようで」
「知ってるけど、アレって義妹だろ? 火憐と月火は実妹だぞ」
「なにを言ってるんですか阿良々木さん、
 シスプリは選択肢によって実妹エンドか義妹エンドか変わりますよ?」
「あー、そうだっけ?」

 てか、選択肢によって血縁か否か変わるってなんだよ。
一体どんな紆余曲折が裏であったんだ、ドロドロしてそうだ。

「まぁとにかく、僕の妹はそんなんじゃねえよ。
 妹萌えと同じくらい兄萌えってのも現実にはねえんだよ」
「ですかね? 話に聞いたりする限りでは確実だと思いますが、
 私自身は面識があるわけじゃありませんし、阿良々木さんがそういうならそうしときましょう」

 そうしときたいならって、
むしろなんで妹が僕にときめいてるっていう状況をお前は作りたいんだよ。
そもそも僕だってあまり知らないギャルゲーを
なんで小学生であるお前がスラスラと口にしてるんだ、そこからおかしい。

「どうだっていいじゃないですかその辺、
 私にも語りたくない過去という物が存在するのですよ……」
「そ、そうか。すまん八九寺」
「嘘ですけど」
「…………」

 いやいや。
 いやいやいやいや。

 なんだそのしたり顔、
すげえむかつくんだけど。
わかってたよ? わかっててノッてやったのにその仕打ちか、
この野朗、もう僕はお前のフリには乗っかってやらない。

「はいはい。で、阿良々木さんつかぬことをお聞きしますが」

 どうでもよさそうに流すなあこいつ。
言っとくけど、僕がノリと突っ込み放棄したら
お前ただただ本当に痛い小学生になるだけだからな?

「小学生のフリに力一杯乗ってくる高校生も相当痛いですけどね」

 そりゃそうだ。

「で、阿良々木さん。それはそうと先程の面子にはねくぁわさんが含まれてませんが?」
「うっかり聞き逃しそうだけど、はねくぁわさんってどこの人だよ?
 カタカナにしたらハネクァワさんでちょっとした異人さんだぞ」
「なぜ含まれてないんですかねえ? 不思議ですねえ?」
 
 華麗に無視した上に嫌に良い笑顔しやがってこいつ、
僕がお前と出会う寸前までそのことで少々混濁した思考をしていたのをわかっての所業か?
だとしたら僕はお前の額に鰊の刺身を盛り付けかねないぞ。
つか本当、なんて答えたらいいんだろうか。
下手な嘘を吐いてもこいつは個人的に羽川と付き合いあるから
即座に露見するし、下手すると羽川からも変に追及されそうだ。
……怖い。
いやマジで。

「おや、どうしました阿良々木さん。
 酷く汗を掻いてるようですが……?」
「うん? 汗? なんのことだ?」

 あからさまな誤魔化し方をしてみた。
してみたというか、咄嗟に口からまろびでた。
けど、咄嗟にでた言い訳がこれって
むしろ凹む。いっそ戯言遣いにでもなれたら楽なのに。

「戯言というか、阿良々木さんは妄言遣いですよね」
「おい、どういうつもりだそれ」
「彼女が居るとか、チョコ五つ貰ったとか、吸血鬼に襲われたとか、
 職安に行くとか、来年から本気出すとか、僕はやればできるとか、妄言だらけじゃないですか」
「よし八九寺、人通りの少ない裏路地にでも行って話し合いでもしようか」

 先の三つは妄言じゃなく事実だし、
後の三つはそもそも口にしてねえじゃん僕。
つかお前はなんで事あるごとに僕をニートとか引きこもりみたいな立ち位置で語るんだよ、
結構本気で辛いんだぞそれ、割と大学受験に失敗する確立があるから。

「大体なにが裏路地ですか、小学生女児にその発言って確実に変質者ですよ?
 明らかにお医者さんごっことかマッサージとかそういう行動が後にありそうです」
「お前は僕をそんなレベルの変態だと思っていたのか!?」
「あ、あの流石に猟奇系とか排泄系とか獣系とかになられると
 私も流石に今後の付き合いの根絶を申しださせてもらいますが……」
「違う! 僕は自分の変態度を不当に低く見られてることに憤慨してる訳じゃない!
 ……ってこのやりとり前にどこかでやったぞ!?」

 戦場ヶ原と以前似た様な会話をした。
つか目の前に居る八九寺と出会う直前にしていた会話だ。

「阿良々木さんは私と出会う直前にこんな会話をこなしていたんですか……、
 正直今後の付き合いの根絶を申しださせてもらっても?」
「そんなに僕と絶交したいのかよ!」

 なんだこれ、本気で涙がでてきた。
僕はそんな変態じゃないのに、
あの会話だって戦場ヶ原の暴走みたいなもので……、
ってなに僕が軽い変態みたいな感じになってるんだよ。
僕はそもそもちっとも変態じゃないしな。
絶対に変態じゃない。
誓って変態じゃない。
むしろどちらかと紳士だ、
目の前に裸の女子が居たとしてもその子が嫌がれば素直に目を逸らすことができるくらい紳士だ。
……あれ? この言葉もどっかで言った記憶があるぞ?

「はぁ、紳士ですか」
「そうだ」
「つまり阿良々木さんはくま吉君だったんですね、なるほど納得です」
「くま吉君と同類だったのか僕!? しかも納得されちゃった!」

 びっくりだ。そしてがっくりだ。
まさか僕が下半身を露出させてうぉぉぉとか叫びながらニャン美ちゃんを追い回すような
ハイレベル且つハイセンスな変態と同類だったなんて。

「うさ美ちゃん役は勿論羽川さんです」
「どんな異名をもってるのか軽く気になるところだな……」
「つばさちゃん、胸でかっ! とかですかね?」
「この瞬間、僕はくま吉君の同類であることを受け入れた」
「……気持ち悪い」
「本気の蔑み!?」

 気持ち悪いって……、小学生女児に気持ち悪いって……、
やべえ、こんなに悲しい気持ちになったのはいつ振りだろう。
初めて火憐に身長を抜かれた時の身体測定以来かな。

「というか話を逸らそうとしないでください」
「…………」

 いや、悪いけどぶっちゃけそれどころじゃない。
そりゃ最初は自分を貶めて話を逸らそうかなって意図は
確かにあったんだけど、今の僕はそんな意図はどこへやらで
マジで落ち込んでるからな? 手元に睡眠薬があれば一気飲みでもしそうな勢いだ。
多分その位じゃ僕は死なないだろうけれど。

「……ふぅ、ごめんなさい阿良々木さん言いすぎました。
 私は阿良々木さんの事が大好きですよー、
 阿良々木さんが元気出してくれないと私も悲しいので元気出してくださいー」
「おっしゃぁぁぁ!」

 速効で元気でた。
流石八九寺、今日三度目の足首の痛みも感じないほどに
いま僕のテンションは上がりに上がっている。
パワーだけならラディッツに匹敵するサイバイマンにも勝てそうな勢いだ。
少なくともヤムチャには負けない。

「まぁでもこういうのって僕があまり口外していいものでもないんだよなあ」

 現金に復活した僕は先程までの雰囲気はどこいく風と
なにくわぬ顔で思案してみたりする。
相当なダメ人間具合である。

「でしょうね」
「……でしょうねって、お前大体の見当はつけてるだろ」
「それは、まぁ一応それなりに」

 当然と言えば当然か、
八九寺は戦場ヶ原の告白シーンに立ち会ってる上に
先刻言ったように羽川とは個人的に仲良くなってるんだし。
ある程度は状況を把握してるんだろう。
……ってことは把握した上で聞いてるのか、一層性質が悪い。

「じゃあ、そういうことだよ。
 寂しいっちゃあ寂しいけど、仕方ないしなその辺。
 確かに僕は羽川に甘えてばかりいたけど、
 それは羽川が僕を甘やかしてくれていたって訳じゃないんだからさ」

 僕が一方的に羽川に甘えて、羽川に甘いだけ。
羽川は、それを黙って受け入れてくれただけで、
決して羽川から僕を甘やかそうとしたことはない。
認識の差、錯覚、錯視。

「つー訳で、この話は終わり。
 あんまりこういう事ほじくんなよなお前も」
「すみません」

 ぺこり。そんな擬音がぴたりと当てはまるような感じで
素直に頭を下げる八九寺。
ただ顔を上げた八九寺の顔には申し訳ないとか、そんな感情は皆無で
むしろ悪戯が成功した子供の愛らしくも憎たらしい微妙な表情が張り付いていた。

「でも阿良々木さん。最後に一ついいですか?」
「……なんだよ」
「阿良々木さんって、馬鹿ですね」

 最後に一つの台詞が罵倒だった。
さっきのお辞儀が完全にハリボテだということが明々白々である。

「馬鹿って……、確かに僕は賢くはないけどさあ」

 だからってあんまりにもあんまりである。
さっきから上げては落とし、落としては上げてを繰り返されてる僕のテンション。
もう僕のライフはとっくにゼロだ。
まぁちょっと調子の良い一言で簡単に回復するライフだけど。

「本当に阿良々木さんは馬鹿です」

 一言と言ったくせに更に続けて罵倒しやがったこの小学生女児。
どうやったらこいつを上手くこらしめてやることができるんだろうか。
とか考えていると八九寺はさらに続ける。

「結局、阿良々木さんはなんだかんだ言って羽川さんのこと、
 なんにもわかってないですよね」

 流石に少しカチンときて
「どういうことだよ」と詰め寄ろうとしたところで、
ひょいと、目の前に差し出される二つの箱。
“二つ”の箱。今日はバレンタインデーで、
箱から香るのは、もはや説明要らずの甘い匂い。

「貰ったチョコの数、あと二つ追加しといてね。阿良々木君」

 八九寺とは違う、聞きなれた声。
それが後方から聞こえて、四度目の痛みに耐えながら僕はただただ微苦笑を漏らすしかなかった。
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Comment

VIPでリアルタイムで見ていたが面白かったです。

こういう感じの話をもっと読みたい。

続きを期待しています!

いつも楽しく読ませてもらってます

コレの続きも是非お願いします

No title

続きを所望します
あと読みづらいです

Re: No title

あとから追加した文を頭に持ってきてるので
確かに初見の人に優しくない設計になってるかも知れませんね
今度修正しときます
感想ありがとうございました


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