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「あ」

 ふと、立ち止まり上を見上げる先輩。
一歩遅れて俺も立ち止まって振りかえると
先輩はなにかをじっと眺めてるようで。

「どうしたんですか?」

 そう聞いてから、同じ方向の空を眺めてみた。
雲が一割を切っている、紛れもない晴天。
ここまでの晴天になると遠くの空が逆に白く見えて
晴れてるのかなんなのかわからなくなる。
先輩はチラッと俺を見てから空の一点を指差して。

「ん? ほれ見てよ、飛行機雲飛行機雲」

 そう細く伸びていく白い線を愉快気に示した。

「……あ~」
「反応が薄いな~」
「まぁ、だって飛行機雲ですからね」
「じゃあ飛行機雲を最後にこうやって見上げたのはいつ?」

 薄くなっていく線を名残惜しそうに見つめてから、
俺の方に向き直りジト目でこっちを見る先輩に
そういえばこうして見るのは純粋だった小学生以降無かったのかも知れないと思う。

「夏の大きな入道雲とかさ、冬に雪が降り始める瞬間とかさ。
 春先にたんぽぽを見つけたときとかさ、秋の紅葉茂る山とかさ。
 そういった物って、年取るごとに感動、薄れちゃうよね」
「……まぁそうですね。特に最近は色々とズレてきてますし」
「私は、いつまでもこうして季節ごとの流れ見たいのを、感じてたいな」

 俺は、先輩から視線を逸らして再度空を見上げてみた。
そこにはもう、飛行機雲の姿は無かった。
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